- C 1009話 ヴィランフォース 4 -
獅子を前にして、挙動不審は――
「俺たちの存在は何だ?」
構想のきっかけは15年前。
3つのマフィアによって形ができるまでに5年も費やされ、訓練と訓練、傭兵に出て5年費やされて。
ヴィランフォースは、泣くも子も黙る。
極めて極悪な暴力装置へ急成長した。
兵士の長も、死地から生還したオスから選抜される。
やあ、野生の王国へようこそ
さて、キョドった中堅の士官だが。
別室で再教育を受けることになった。
「俺たちの存在は、当局に対する剣であり、仲間を護る盾だ」
マフィアへの帰属意識は少し薄い。
かつては、3つのマフィアからややはぐれ者っぽい立ち位置の、危ない人材を中心で構成されていた。
15年という時間の経過と、死地へ赴き、生きるか死ぬかと言うサバイバルを熟してきた者たちにとって、ファミリー意識が湧かなくなっていた。同じ境遇で同じ泥水を啜り、根や葉、ツタなど齧って満たし、ギリギリのとこで生き残ってきた仲間たちがファミリーなのだ。
組織の垣根を越えたタスクフォース。
マフィアの盾として機能しくれている当たりはなんの心配もない。
ただ、少し不穏な雰囲気もある。
若手や幹部との摩擦だ。
収監された古参の幹部とボスは、厳重な警備の刑務所でも、それぞれのコミュニティを展開してた。
無理に脱獄しなくても、塀の内側から組織を動かせるので。
確保された安全の内側から無理難題が飛ぶ。
ボス連中がヴィランフォースを狗だと呼ぶ。
狗は狗でも猟犬の方で。
信を置けば必ず意を汲む忠犬だと諭してるんだけど。
最近は、調子に乗って士官候補だと言って若手幹部が監察で来るようになった。
で、言うのだ『狗は飼われている自覚を持て』と。
◇
「――で、麻取局に喧嘩売ったのは?」
直立不動の幹部と兵士たち。
スーツの代わりにバトルユニフォームに身を包み。
後ろ手に組んで胸を張ってた。
「いや、アレか。あっちのモグラが点数稼ぎでもしようと? ロケランでも持って出たとかか」
巨漢の男の張ってた肩が丸くなる。
いいとこ見せようと、イタリア系の監察官あたりが横流しでもしたのだろう。
これで、都市伝説ではなくなった。
「むしろ、宜しかったのでは?」
なにが。
傭兵上りの武装集団がマフィアの用心棒をしている。
常軌を逸した武装ってだけで、当局の警戒心は何段も高くなるのに、それのどこがいいのか。
秘密裏に作られた理由は色々ある。
不確かであることが重要なのだ。
「余計な事をしてくれたおかげで、虎の尾を踏んじゃいなければいいがな」