- C 1007話 ヴィランフォース 2 -
その名称も洒落のつもりか。
“ヴィランフォース”。
古今東西の悪役ども揃いも揃って、タスクフォースを創ったというのだ。
人工島の中でも武闘派が中心のイカレた猛者ども。
重武装なのも納得だし。
連合であれば資金面も問題はない。
これはもう、抗争だ。いや、戦争か。
◇
一時的な解放は、このヴィランフォースへ対抗するための戦力確保と言ったところか。
或いは、ヴィランフォースの存在をネタに。
十蔵さんが煽った結果かもしれない。
相手の火器の強力さを誇大広告でもして。
「お爺ちゃんの手法じゃないけど、しないとも言い難いかなあ。それで大した事がありませんでしたってのは、お爺ちゃんの今後の活動に支障をきたすから。たぶんしないとは思うけど」
孫娘はよく見てますね。
まあ、そこはそうでしょうって。
孫娘に秘匿情報“ヴィランフォース”の存在と、明確なる危機をだ。
ボクらに伝える必要があると思ったのは間違いない。
自衛隊が人工島で重武装を解くには限界がある――そもそも、警察特殊部隊を差し置いて武力行使ができないから、自治政府がその特権でもって雇った傭兵たちの力が必要になってくる。
忌々しいと感じてるだろうし、思われてる。
だから嫌がらせに出たのだろう。
「回答は出てたって事か」
エサちゃんが来たのだ。
自治政府は裏ルートからの接触ではなく、本国外務省に頼ってアプローチしてきた。
かつて紛争地から邦人救出なんかさせた時のツテとして。
国境線の間際で、外務省が派遣した正規の軍へ引き渡して、表立っての活躍はない。
いいところ取りした心の棘が。
小骨のようにイラつかせてて。
そんな流れでボクらを紹介したのだろう。
「自治政府の方は、そうでもないみたいだけど?」
十蔵さんは政府にも太いパイプがおありなようで。
孫娘にそんな話をしてるんで。
「マルちゃんを護るんだから、ある程度、状況の把握が」
はいはい。
ボクはエサちゃんの金髪を撫でてた。
サラサラとした細くきめ細かい髪。
ちょっと動くだけでシャンプーの香りがする。
ああ、これは薔薇ですか。
「お爺ちゃんからも一つ、どれだけ絞り出せるか、だって?」
戦力は、兵力ですか。
テロ組織に対してなら持てるすべての戦力を投入する。
“神風”は健在だし、やると決めた連中の躊躇の無さはかつてのこの国並みだ。
死後にあずかれる対価の保証(死んでから得るなら意味もないが...)されているから、ベストを纏って飛び込んでくるのだ。
ちょっと価値観の違いなんだけど。
「回せるだけ回すし、必要なら必要な数を言えって話になるかな」