- C 1006話 ヴィランフォース 1 -
「――自治政府に確認した」
やっとか。
取調室っぽい無機質な箱の中。
間に何もなく、机とか...
そもそも対面になってるけど。
立ち話?
「椅子や机は凶器に成るからな、この場所には一切ない。誰にとっての凶器かは、話さなくても理解できる(こめかみを指さしながら)頭はあるのだろ? で、打診したが色よい返事もない。今は未だ」
マジか。
いや、嫌がらせか。
「確認したんじゃないのかよ?!」
打診なんて、報告した程度じゃねえか。
「問い合わせ事項が多いらしい。誰かさんが、洋上から人工島に砲撃してくれたんでな」
ああ、じゃあ、嫌がらせだ。
今頃、傭兵団と政府が交渉しているとこか。
身分の保証をしろとか。
そこに十蔵さんが関われるトコはないだろうなあ。
今頃、すげぇー悔しがって。
いや。
孫娘の方を優先するか。
エサちゃんに泣きつかれて、連れてきちゃった訳だし。
こりゃ拳骨か?
「それと、八ツ橋のお嬢さんに何をするつもりだった」
質問っぽくなかったな。
語尾がこう、刺々しい感じで。
黒豹便トコみたいな、ああ、影響はそこまであるんか。
「いあ、彼女が見学を希望したんだよ。いつか、傭兵団に入りたいって、殊勝こと言ってくれたんでね。特別に麻薬取締局の連中との会合でも見せてあげようとしたのさ。しかし、人工島の汚物も重武装化したもんだねえ」
話の途中だったんだけど。
ボクの真横に蹴りが繰り出されてた。
右の頬を圧が抜けてたね。
イラっときたらしい。
「どういう?」
「虫が居たんだよ」
ちびっ子で生意気だから、驚かせようとしたか。
まあ、目がマジだし。
殺気も駄々洩れてる。
◇
取調室のスピーカーに雑音が。
『傭兵団ども、一時解放だ。目の届くところに居ろよ!!』
舌打ちを残して。
対面してた兵士が退出する。
と、代わりにエサちゃんが飛び込んできて、ボクにタックルしてた。
「お爺ちゃんが手を回してくれたよ」
え? えー。
それじゃあ。
拘束時間は1日も掛けてない。
中央駐屯地から目が届く、ホテルへ缶詰めになることになったけど。
その程度に済んだのは八ツ橋十蔵という大老の御業だ。
人工島の顔役とは侮れないものだなあ。
「でも、これでまたひとつ借りを作ったんだけど」
返し切れない借りが多い気がする。
こんな事で十蔵さんの権威が損なわれるのも、どんどん肩身が狭くなる想いも。
早く解消したいんだけど。
「そんなこと考えてたら、お爺ちゃんが涙目になるから」
ああ、天使。
「っと、そんな場合でもなかった」
エサちゃんから衝撃的な言葉が告げられた。
重武装化した犯罪組織にも垣根を越えたタスクフォースがあるという事実をだ。




