- C 1001話 タスクフォース 1 -
自治政府が用意したのはタスクフォースと言う器だ。
他者との繋がりが希薄で、独身者かつ協調性はないが、決して自己の生き方を曲げることのない実直な者が選抜された――歯車たれとする組織では、はみ出し者は生き残り難い世界。
そんな人材にも潜り込もうとした地下組織。
当局の垣根を越えて、特別編成された特殊環境下の実働部隊。
犯罪者に限らず...
こんなのが権力なんか握ったら、怖くて仕方ないものだが。
そう思った犯罪組織も、地下で暗躍する反政府組織も。
同様にタスクフォースを編成した。
選抜初期段階で、両陣営の候補生の半数が入れ替わっている。
考えることは同じだという事だ。
ただ、元警察官、或いは兵士の身分は死んでも回復しないという点が残る。
犯罪者の身分も似た形だけど、こちらはまあ、表向き殉職で英雄とされるので複雑だ。
こうして結成から始動までに多くの隊員の命が露と消えてた。
初期の摘発は探り合いで身バレした。
質問の多いやつはキナ臭いって流れで――高度な情報戦というアレ。
はみ出し者は馴れ合いを苦とする。
孤独に耐えうる感覚がそもそもマヒしている。
「孤独って何? ソレ、美味しいの?」
くらいのマヒっぷりで。
◇
シャワー室から湯気と共にエサちゃんが出てきた。
「それじゃあ、マルちゃんでも接触したら」
フレミングの左手めいた形に指先をボクに向ける。
まあ、拳銃のつもりなのだろうけど。
バスタオルで前を隠して欲しい。
「そ、ドンだよ」
ばぁ~ん、なんて可愛い声音を発する。
もう。
目のやり場に困るから、茂みがふさふさ気持ちよさそう~
おっと、直視しちゃってた、バレてないかな。
「こっちからの接触は?」
その気になってるようだけど、エサちゃんは自治政府と傭兵たちとは関係ない。
ハナちゃんはギリ、関係者だが。
うーん、いまいちだな。
ギリで。
十恵ちゃんは関係者だし。
潜入に成功した分隊が、彼女の下で活動している。
「こっちからも、あちらからも貰ってないよ。十恵ちゃんのナイスな(親指をさりげなく挙げて、茄子を喰う)ハッキングで傍受戦。傭兵が得意な盤面で仕事すればいいだけ。(ボクも下唇を甘噛みしながら)いざ重要な案件、例のキャンディの情報はタスクフォースと共有したい時だけ...回線にエサを撒くの」
そう、さりげなくパラパラ、と。
さすれば暗号に気が付いたエージェントが、人工島の端にある桟橋に現れる手筈。
このエージェントは麻薬取締局の連絡員で。
たぶんスパイっぽい人なのだろう。
「1対1?」
ハナちゃんが否定したけど。
ボクだって命は惜しい。
そりゃ相応の装備で赴く。
「え?! マルちゃんが行くの!!!」