- C 999話 蜜蝋の生産風景 1 -
ボクの治癒玉に使われる蜂蜜は、人工島の外から持ち込まれるものだけど。
全部が全部と言う訳にもいかない。
と、言うのは先述した――この島は自由気ままに太平洋を彷徨っているのだ。
帰属すべき国はあるけど。
半ば諦められてる独立国家めいた気質があって。
今日もふらふら、あっちにひらひら――雲が風に流されてるような風来坊。
そんな人工島に空輸便を届けるのっては非常に難しいのだ。
観光船と共に泳ぐイルカは、彼らが興味本位で近づいてきたものだけど。
人工島の沖合にて、並走するような船舶は。
人工島を探してた連中のものだ。
これで空輸便を誘導して荷物が卸される。
ボクの所属する組織も、各国の駆逐艦にバレずにこっそり追従してた。
バレるとマジで大変で。
『本艦真下に金属音探知!! 国籍不明艦です!!!!』
ほら、ハワイから人工島に追従してた駆逐艦が気配に気が付いたようだ。
アナウンスには『これは訓練ではない』と付け加えられて、橙色のライフジャケットに袖を通した士官たちが奔っていくようだし。
下士官や水兵がヘルメットで完全武装してた。
◇
ボクの仲間たちも『ヤベ??! 見つかった』程度にビビってた。
浅深度35メートルを駆逐艦の真下でゆっくり航海してたようで。
ソナーを打ったら、ピーンからのコーンってめっちゃ早く帰ってきた。
そりゃ駆逐艦もびっくりするだろ。
世界最大の民間軍事会社として登録はしている。
お金大好きの集まりなので、当局よりも実入りが良ければ、平気で国連軍も敵に回すアホだが。
そのアホはスリルも大好物だ。
「はいはい、爆雷準備してるっぽいね」
水面にちゃぷちゃぷ浮いてるカメラで、観測も出来る。
耳を澄ましてれば、回転翼のボコボコ音の間からも聞こえるんだけど。
最近は有線カメラの方が情報収集としては有意義で。
「操舵、水平浮上10メートル」
「25じゃ、セイルで船体を?!」
波の上下はバカに出来ない。
35だって当たればどっちも悲しくなる。
「脅かすだけだ。副長、艦首魚雷発射管の1番、2番に注水を!!」
その後、双方で睨み合うってたようだけど。
いつの間にかに――。
ボクのところのアホどもは人工島の真下へ移動してたっぽい。
こして多分だけど。
世界の軍事バランスは天秤の傾きを元に戻したんじゃないかな。
ま、抗議出来ないんで。
人工島・航海庁への苦情電話を鳴らしまくって、業務妨害とかしてたようだ。
暇なのかなとか思う。
◇
人工島の水中部分には。潜水艦用の港がある。
水上艦艇や、航空機だけが上陸するわけでなく、一応、国際海事法にならって。
人工島だけど巨大な船としての行動が出来るように努めてるわけ。
船便で潜水艦は流石にないけどさ。
「はい、お待ち! うちの大尉ちゃんに天然蜜蝋のお届けですよ?」
艦長自らが木箱を持って検疫所へ。
施設の賑やかさはほぼ日常だけど、米軍さまが多いなあって印象で。
噛んでた爪楊枝を口の端に移動させ。
「なに、これ?」