- C 998話 聖女と魔女 3 -
ボクら学年の聖女クランは、別の活動に従事している。
卒業を賭けたギャンブルのような道のようだけども。
そのギャンブルのような道と言うのが...
調査によると、
寄付金の本来の運用は、ゲームみたいな舞台装置である学園の運営に回っている。
ただし、こんな膨大な遊びに付き合えることが出来るのは資産家だけなので、決して寄付金が政府・教育機関の関係局から充当される、補助金を上回ることは無いわけで。
学園は独自に、資産運用を行ってきた。
それが約四半世紀前までの話。
まあ、あれだ。
ヤっちまったなあ~って、OBの教諭たちは今の運営者を罵るだろう。
財務記録にナイスなハッキングをかました、十恵ちゃんはここですべてに精通した。
なんか、片栗粉みたいな匂いがしそうな表現だが。
文字通り。
学園がひた隠しにしてきた一重、二重に三重に守ってきたセキュリティを貫いて。
丸裸にしたのだ。
◇
「聖女と悪女、いや、ここでは魔女は紙一重だね」
聖女との茶会を終えたボクは、自室に戻って作戦会議。
教師として潜り込んだ十恵ちゃんは、教諭会に呼ばれる立場にないのでフリー。
副校長につき纏われながら、職務を熟してるんだという。
それはそれで面倒のようで。
「と、いうと?」
肩を揉む。
腰に腕を回したり。
密着してきて間接的に硬いものを当ててくる。
セクハラなんだけど...
対処に困る新人教員には、円満退職と解雇の違いは大きすぎる。
十恵ちゃんも耐え抜いて、
ここの情報を集めたのだ――見た目は20代半ばに見える童顔だから。司馬家の特徴としては、この童顔のせいで得したり仇に成ったりする。
「まあ、これはマルちゃんが持ち帰ってきた“サンプル”が物語ってる。ここの特別授業は、資産家を引き付ける為の餌でしかない。ただ、ゲームを導入として授業の工夫は今日までにも幾らかはあったし。事業についていけない者や、理解度に差がある者、発達障害によって注意散漫になる子にも遊びながら理解できるようにする手法はあったって話。これらを隠れ蓑にして、現経営陣は」
十恵ちゃんでも言葉が詰まる。
まあ、これでも教育者だから。
生徒たちが顧客とは限らないけど、実験台かもしれない。
「ここの現経営陣は、ドラッグを捌いている」
帳簿にも隠語めいた記述で誤魔化してあるようだけど。
別に口座がありそうな雰囲気だ。
「で、マーガレットさんから?」
サンプルに渡された溶剤は、恩寵の原液。
薬瓶に入っていて、匂いは甘ったるく感じる。
「超高濃度のMPドリンク“エネルゾーン”にも感じないことは無いけど、この甘ったるさに独特な苦みと言うか、辛さ? こうひり付くような...」
味を表現するのが難しい。
一括りに苦いでは纏めたくない渋みがあって。
「漢方薬のような?」
「そそ、ウコンとかドクダミみたいな」
エネルゾーンは、スポドリのような即・吸収力めいたところが売りだ。
VRゲームでも疲弊したMPに急速チャージとか謳ってた。
だから飲みすぎると血液中に含有する糖の値が急上昇して、糖尿病を発症するリスクが高い。
恩寵の開発者は、ベースに漢方薬を使ったと思われる。
「――改良を依頼された」