- C 993話 茶会イベント 2 -
「愚弟が申し訳ない事をした」
保健室に運ばれてたボク。
病床の上で、意識が飛んでたボクに謝る王太子。
保健室は、まあ。
教会のような雰囲気で――修道女めいた看護師と、司教のような雰囲気の医師が働いている。
ファミリアを通して見ていると。
学校の施設の何もかもが中世欧州のような雰囲気に見える。
えっと、この教会は...。
たぶん、9世紀の英国。
村か街かいずれかに建立された、石造り、藁ぶき屋根の貧しい“神の家”といったところか。
7王国時代の建築物は、デーン人の襲来によって度々、壊されて燃やされているので。
あちこちに教会の残骸めいたものが放逐されてた。
瓦葺みたいに金を賭けても。
2,3年で舞い戻ってきた蛮族に壊されるんで...
っと、話がズレた。
意識が飛んで目を腫らせた、ボクに対して紳士であろうとする王太子の実直さは。
地雷王子と対比されて右肩上がりに株が上がる。
ぎゅんぎゅぎゅ~ん...
そんな擬音が聞こえてきそうな、好感度の上がり方は異常なのだけどね。
だってこれ、自作自演めいてるじゃん。
◇
素行の怪しい弟が、不良どもと共に。
女の子を虐めているところへ、たまたま通りかかった聖人君主然のような兄貴が助ける。
おっと、マッチポンプ。
兄弟で画策したようなもんだわ。
「そこで仕切り直しなのだけどね」
甘い声音で、ボクを誘う。
外務大臣の令息は、長男の方の人気は入学初日から凄かった。
今、聖女主催の茶会だって。
その誘いなのだけども。
保健室の病床に転がっている怪我人から、ボクに向けられた視線が痛い。
意識が無くてもそれくらいは、もうひとりのボクがちゃんとわかってた。
「聖女“マーガレット”がキミと...」
彼女の名が耳に入って来て。
惚けたフリが思わず解けそうになった。
上の空で、わざとヨダレを垂らす。
アホを演じるのは、ひと苦労だ。
「うむ」
深い溜息が王太子から漏れた。
付き添いの従者ハナ姉から、
「もう少し時間を頂けませんか? お嬢さまも女の子ですから、その」
精神的ダメージが大きいと伝えた。
王太子の手を齧った野生児と、バストの無さに悩む繊細な女の子。
このギャップに少し戸惑いながら。
「分かった、後日、招待状という形で主人に届くよう手配しよう」
そうしてその場は終息する。
◇
保健室から引き取られたボクは、エサちゃんが『前線基地』だと住み着いた、ボクの個室へ。
男装寮でもあるし、手の早い先輩方も多い。
ボクなんか入寮初日に胸を揉まれたし。
股間を撫でられ匂いも嗅がれた。
尻は直接だし。
変態しかいない。
「――で、ちょっと背中を押してもらっただけで、他人の手を噛むなんて。どんな、野生児なのかな?」