- C 992話 茶会イベント 1 -
茶会へのお誘いというのは突然に発生するイベントのようだ。
ボクから見ると。
ボクが主人公の純真無垢な少女で、...っ、異装の少年のような女の子ですけど。
攻略対象の4人と絆を紡いでいくように。
まあ、見えるように作られているようで。
その。
ステータス画面に好感度という項目がある。
これは全校生徒が主人公なので、全員が、誰某にどれだけ好感度を持っているか数値で見れるわけで。
勿論、エサちゃんとは相思相愛。
揺るがないどころか。
「8」が横に倒れて見える。
切り離す事叶わず、か。
一蓮托生。
旅は道ずれ。
極上の愛は永久に。
「で、茶会だが?」
おっと忘れてた。
つい別の世界に飛んじゃって。
誘いの手を見て、唐突に齧ってたボク。
なんで齧ったのか。
いあ、誰かに押されたんだ、わ。
こう、背中と肘が当たったという――突き飛ばされたような。
そんでフラグが立ったって。
アレだ。
思わず自己防衛で...
◇
「俺に齧りついたって事か?! 弟の手じゃなく、兄の俺にか!!!」
い、あ。
これにエサちゃんの噂が関与していないとは、確かに言い切れない。
えっと。
王太子がキライでした。
立ち振る舞いと、佇まいは間違いなくイケメンだ。
他の娘のステータスを覗く限り。
王太子への好感度は“憧れ”で埋め尽くされている。
しかも分かってて、髪を弄る癖がある。
見ていてイラっとくる仕草だ。
「えー、っと。もっと齧りますね!!」
血が出るんじゃないかってくらい噛みついた。
地雷王子とふたりでボクを引き剥がす。
まあ、その際にだが。
地雷王子にボク、おっぱい揉まれました。
「セクハラ―!!」
叫んでたね。
ボクの場合は、えっと噛みハラ?
「ちょ、ちがっ!」
いあ。
地雷王子こと“オリバー・オスナージュ”は、ボクのまな板から手を放すと。
「セーフだ、セーフ。膨らみは無かったし、揉んでもいない。このくらいの年頃の女子は、ほら...ミニマムな子でもわりとあ、あ、あるって噺だろ?! だからセーフ、背中みたいに平らだったからさ。セーフ」
糞ぅー。
そこまで平たいアピールしなくたっていいじゃんか。
たぶん、ボクは大声で泣いたんだと思う。
記憶に残らないくらい。
そして、普段は蔑視してた女子生徒たちが、ボクを保護してくれた。
彼は学園中の女子を敵に回した。
それは――。
聖女も。
「だから兄貴に噛みついた、あの乱暴な野生児の身柄を押さえつけただけで。な、兄貴だって... 腹に腕を回してこう、小さな体に巻き付いただけだって援護射撃してくれよ!!」
兄が援護したところで、オリバーの株は下がり続けるだろう。
いや、標的が兄に向きかねないので。
傷は最小限に押しとどめる方が得策だ。
「マジで言ってるんなら、オリバー君のネジ。どこへ落としてきたのかって疑いたくなるんだけど、今、キミはね女子生徒から“女の敵”なわけよ? 誰が援護するって、そんなの共倒れになるだけ。あんたはさ、新しい顧客を開拓すればいい楽な仕事、与えておいたよね?」
宰相令嬢“グレイシー・ケッツハット”の甘い声音。
聖女に劣らず清楚な雰囲気だが、中身は男の子だ。
女装が趣味で助かってるとこだが。
「愚弟が済まない」