- C 991話 証人保護と魔女 3 -
組織が少女の試作したものに注目したのは、偶然だったのか今となっては検証は出来ない。
恩寵には元来、マナを取り込みオドを回復させる効果の他に、微量ながらに身体強化などもバフが仕込まれていた。これらのバフが端役の内は、中毒性が薄く依存症に成り難い。
仕込まれていた理由は簡単だ。
オド枯渇状態になると、注意散漫になり急に衰弱する。
なにしろ、精神的な疲労ダメージが肉体の制御に、支障をきたさせるのだから。
これらの一時的緩和処置に、バフが入ってた。
まったくボクの魔紋シートとよく類似してるものだ。
先駆者が居て、それが組織の目に止まったなら。
ボクのシートなんて二番煎じもいいところだろう。
だからか。
或いは相当、怪しんでいるのか。
彼らは、何もしてこない様子。
◇
百層ダンジョンの最上階。
フロストドラゴンにフロアボスとして任せてある部屋にて、組織の幹部が集まる。
皆、それぞれお気に入りのクッションを抱えて終結。
「コジュコジュ、それこの間の誕生日プレゼント?! 使ってくれてるの!!」
ドーナツ状のクッション。
人工島ではデスクワーク社畜に、大人気のアイテムである。
こう童心に帰った気分で、浮き輪っぽく。
いや、沈み込むというより包んでくれるような。
ただ、座ると面白い形になるので、人前ではお勧めできないんだが。
「んま、まあね。座り易いし」
「ほらほら、先生方。報告、報告会ですよ...先月の“恩寵”売り上げは、119パーセントでした。今月に入ってからは、地下墳墓パーティの問題もあって落ち込みが酷い。先月をベースに今月の試算は10パーセント減収に成りそうです。代わって全くの毒性がない通常商品、“治癒玉”が此処にきて売り上げを伸ばし、154パーセント。舐めてるだけで治癒するのに、何故かいつも舐めてしまっていると、リピーターの子が」
報告しているのは、ギルドにて受付しているエルフさんの模様。
耳が上下に動いてる。
ああ、興奮してるんだな。
「もはや、彼女に任せず。“治癒玉”を創った、マルって子に改良を委ねてみては? 毒性が無いけど自然と求めてしまうなんて、正に魔法のような領域ですし。“恩寵”から毒性が消えても、バフがハイにさせる事は実証されてますし。ね?ねえ?!!」
これは、小角先生だな。
組織とはこの学校の運営員会。
沢山の寄付を頂いてるのに、内情は火の車だという。
苦肉の策で25年を境に。
秘密結社を立ち上げた。
現在までに、ドラッグ収入が組織の金策全体の49パーセントにまで成長し。
そうした情報が一時期流出しかけた。
例の自殺問題だ。
そして、失踪した少女も――。
「彼女から接触して貰いましょう。エルフの叡智を与えた子にどこまで敵うか、見てから判断します」
ギルドのお姉さんが仕切ってるんかな?
まあ、これはそうした会話が眠るドラゴンの部屋で行われたというイメージかな。
うん。