- C 990話 証人保護と魔女 2 -
悪魔の手から逃れた生徒の話をしよう。
それは女生徒で、不運にも魔力切れを起こした生徒に対して。
ボクが用意した貼るだけで魔力回復する魔紋シートと類似する、湿布薬の試作に到達してた。
いや、どっちが先かなんて些末な事で。
世界樹の葉をジュレのようにして、飲み込むか。
或いは湿布として貼るかして、魔力や体力のまたは、癒しを求めたエルフの叡智から発想してる時点で。
根っこは同じって噺。
ただ、まあ。
彼女が魔女に疎まれた原因のひとつであって、排除しなければと思いに至る要因でもある。
状態異常の抵抗、いわゆるレジスト。
術式としての“魔法”が存在する訳だけども、湿布薬の副次的効能に“レジスト”が記録されてた。
“麻薬”の中毒性までも打ち消されてしまうと、確認され。
一時期だが、細やかながらに話題になったものだ。
当時は、学生の発明品程度。
人工島の医薬品会社が目をつける頃までになると。
事態は急変する。
◇
魔女と反目する勢力の台頭により。
女生徒の生命が怪しくなった。
だから、彼女は誰の手も借りることなく失踪したのだ。
身の危険を、魔女本人から伝えられたから。
彼女の身柄は麻薬掃討作戦本部にあった。
当局にて保護されてある。
これはボクの部下による手柄だ。
少女を排除する目的でも、手当たり次第に潜らせるのは自殺行為だってこと。
保護されているブロックへはセキュリティの厚い壁に守られている。
搦め手に。
タスクフォース参加者の痕跡を狙うというのもあって。
海外では、捜査対象が横に手を回して関係者の家族の拉致なんてのもあるとか。
鬼畜だけど。
あちらも必死だって話で。
こちらの調べでは、関係者には痕跡の薄い者が当てられてるという。
警察や検察、軍隊に自治政府の政治家も関わった大規模な、作戦部隊が動いてて――そのバックアップに、ボクたちのような傭兵にも一枚噛ませてもらってる。
まるでミルフィーユだ。
何層にも重ねられたイメージだが、綻びが生じても中心にある少女には届かない。
そんな気にさせられた。
何でだろう?
「――はい、集中して余所見をしない。もっと深く、ふか~く深呼吸して」
エサちゃんの声と、甘酸っぱい香水の匂いがする。
いあ、なんか心音が。
高鳴ってるから、これはボクのか。
「宴の中で見たのは誰だったかな~ もっと深く潜ってみよう!」
ボクは今、記憶の中にいる。
雰囲気に呑まれたフリをして、心の中に焼き付けたあの場の再現シーンに。
エサちゃんは誘導係。
ボクが真実にたどり着くための...