- C 985話 キャンディと魔女、2 -
紹介した葛家当代当主の“たま姫”お姉ちゃんが、エサちゃんを含めた家族を集めた。
宗家の屋敷は鹿鳴館チックな洋館で。
敷地のど真ん中にデデデーンって建ってる感じ。
お爺ちゃん以外は、子飼いの使用人だけが利用。
エサちゃんやらの孫を含めた家族は、敷地の端っこに棲んでる感じ。
これが序列というものだ。
こええ~
階級世界。
◇
上座にある十蔵お爺ちゃんを筆頭に。
血族の一部が呼び出され、留置所にほっぽかれたボクとの関係する家が着座してる。
みんなピリピリした雰囲気でね。
殺気だっているというか。
憎みあってるような。
お爺ちゃんから見て、嫡男といえば。
エサちゃんの“お父さん”で間違いはない。
けど、勝利さんは放浪癖というのかなあ、家に寄り付かないタイプ。
自分で使える資産なんかでサルベージ会社を起業しちゃって、ますます人工島から遠ざかってる。
愛娘とは衛星電話で蜜月のようだが。
これはボクの目でも健全とは言えない。
次に勝利さんの妹さんで、末っ子。
“砂生”さん、エサちゃんの育ての親にして溺愛する叔母さま。
ただし本人の前では必ず『お姉さま』と呼ぶ必要があって。
ボクは何度も地雷を踏んでいた。
そのたびに死にそうになってる。
ああ、よく生きてるなあ。
「八葉の葛さんが本家に指図するのかしら?」
鼻持ちならない高圧的な態度は、エサちゃんの育て親で叔母の“砂生”さん。
これが件の『お姉さま』だ。
西洋人形みたいな美しいエサちゃんには溺愛してるけど。
それ以外への口撃は、いつも棘がある。
まあ、それも姪っ子を亡き母親に代わって護るためだと思うと。
愛情の表現方法なんだと思える。
ちょっと、ボクへの当たりが強いのは。
悲しくなるんだけど。
「指図ではなくお知らせです。宗主からのお言葉があります」
「お父さまからの?」
不思議そうだけど。
刺々しさは消えた感じがする。
◇
問題とされたのは、自治政府が外部へ助力を求めた案件に。
八ツ橋の名を軽々しく出したことに対する、宗主の怒りそのものだ。
北区警察署・生活安全課と治安強行班なんかが動いたのも、八ツ橋の手だったことが十蔵氏の調べで分かった――つまり、3日も掛ければ幾重にもフィルターがかかってた点を線で結ぶことが出来たということだ。
情報漏洩を恐れてた密売人たちの隠れ蓑。
“魔女の宴”は暫く開催されないという事と、麻薬取締局の指示で動いてた人工島自衛隊を含むタスクフォースだって、これらの騒動で計画は白紙に戻る。
「砂生、お前の浅はかな行動がすべてを狂わせた!!!」
反論させて貰えないのが十蔵氏が開く家族会議だが。
「お父さま、それは私じゃなくて...」
目端にある別の家族に向けられた。
直上の姉が嫁いだ四ツ橋の家だ。
八ツ橋の御三家といえば、
“二ツ橋”と“四ツ橋”に、“六ツ橋”があって現在、グループ内で充実した役職を貰えていないのは“四ツ橋”の家だけである。とは言え、各企業の持ちビル管理業務と警備保障会社の運営に関与しているので、閑職ってわけではない。
不動産の管理なのだから旨味は一応あるんだけど。
あ、えっと他に御三卿ってのがあって。
“一ツ橋”と“三ツ橋”で“伍ツ橋”ってのがある。
八ツ橋の総監って立場かな。
宗家は継げないけど、グループの腐敗に目を光らせてる暗部の方々。
関わりあいたくないけど、宅配便で目が合ってしまう。
黒豹宅急便は彼らの一面だ。
駆け足だったけど。
八ツ橋は大きな家ってことで――。