- C 983話 魔女の宴へご招待 3 -
目的は果たした。
自治政府からのグランドオーダー。
麻薬の存在を明らかにせよ。
出回ってる場が、地下パーティって呼ばれる、非行少年少女の溜まり場である。
彼らにすれば非現実的な誘惑の多い場だけど。
運営や運用は非合法を生業とする大人たちである。
人工島では“マフィア”や“カラーギャング”たち。
人工島警視庁も大分、煮え湯を呑まされてた。
マフィアの専門は、誘拐ビジネス。
島外から観光できた国や人種、肌の色に髪の彩、とにかく片端から攫って身代金を掠め取る。
中央アジアか、アフリカ並みの治安の悪さ。
表向きの皮は“日本”だけど。
ひと皮むけば、地上で生まれた地獄へようこそ。
さて。
エサちゃんが証拠を押さえて。
ボクが主催者に酔ったフリで近づけば、この調査も半ばで解決の目途が立つ。
そう思ってた時期が、たしか5分前にありました。
えっと。
はっちゃけたフリもして。
がばっと脱ぎ散らかしまして...
上下で雰囲気の違う下着姿で、訝しむ主催者の足首に纏わりついてたところで。
『北署生活安全課だ!! 生徒たち、その場を動くな!!!』
って邪魔が入る。
少量の麻薬と、明らかに下っ端の売人が捕まり。
で、参加者も校内の病院施設へ担ぎ込まれたところで。
えっと、なにこれ?!
なんで、ボクの手首に手錠が?!!!
◇
北区警察署・生活安全課に。
治安強化班と、麻薬取締捜査班って名乗った強面な刑事さんたちに囲まれる。
180~190ほどの身長と横幅を誇り。
体重もそれなりに重そうな雰囲気の殿方。
怖いなあ。
挙動不審なボクと、八ツ橋家のお嬢さまとでは扱いも、対応も違うわけで。
北区警察署の所長さんのバーコードが上下するのが見えたんですが。
「あれ?エサちゃん、え、ちょ、だけ?!?」
彼女の家人という侍女なる人が迎えに来てた。
エサちゃんの親が心配して、お爺様に内緒で手配した人々に守られながら。
今まさに同じ容疑で留置されてたボクと離れ離れになりつつある。
「ごめんね、マルちゃん。門限に遅れちゃいそうだから」
「えー?!」
門限は仕方ないけど。
ボクはー??
ハナちゃんが保護者として生活安全課のカウンターにまで来ているらしい。
けれども。
『目撃した生徒たちの証言によりますと。ちんちくりんの少女が“麻薬”について語っていたとか、或いは少女売春などの勧誘をしたとか、噂が飛び交っていまして。本人から一応、事情を聞かないといけない状況でして』
担当の婦人警官の口調は重たかったという話。
少女の買春や売春の方は、失踪した娘の噂話だ――キャンディには常習性が2回目から強くなるよう、調整されたものが渡されることは承知している。“魔女の宴”が不定期だったとは考えられないので、それらの様子を問い質してたんだけど...どうも、不審がられてしまったようだ。
うーん。
下着の上に宴に着ていった麻袋のドレスでは。
こう、パイプ椅子のひんやりさで。
ぶるぶるっとくるんですけど?
気が付いた婦人警官の方。
「えっと、毛布?」
「いえ、おしっこです」