- C 981話 魔女の宴へご招待 1 -
地下のカタコンベを抜け。
更に下階へと降りる階段で、個人的には何度か滑りそうになった。
男装の麗人然として、お姫様であるエサちゃんをエスコートするはずが。
いつの間にか逆転。
エサちゃんに手と腰を支えられて、迷宮の中を進んでた。
「本当に宴には参加してないんだよね?」
「もちろん」
それにしては。
いや、勝手知ったる雰囲気がある。
お嫁さんを信じない訳じゃないけど...
「信用できない?」
耳を甘噛みされる。
ひゅーひゅーって口笛を吹かれて、すれ違う生徒に揶揄われ。
顔真っ赤になるボクがあって。
◇
エサちゃんが耳元に甘く囁く。
「ほら、この下が“魔女の宴”だよ」
甘美で鼻が擽られるような。
その中で、気怠さが纏わりつくような匂いがする――心地いいとかとはまるで違う気もするけど。
「気を確かに。マルちゃんは耐性がないだろうから、わたしと口吸いして」
言われるがままに。
舌を絡めたディープで甘くとろけるような、濃い口吸い。
飛びかけた意識がじんわりと戻ってくるイメージで。
「鼻血は自分でなんとかしてね?」
あ、はい。
何かされるんじゃ、って想像しちゃった。
ほら柔らかいところを直ぐ、甘噛みしてくるから。
今回も人目も憚らずって。
思うじゃないか。
「わたし、そんなに節操なしじゃないと思うよ?」
VRの中では無邪気というか、我が儘ですけどね。
見えないところなら。
中指がずっと恥ずかしいところを這ってるんですけど。
「で~も~」
ん?
ん?
「マルちゃんの準備ができてるってなら~」
ほ、ほら。
あ~ 準備って心の? かな。
デキるかなあ、ここで。
「さ、行こっ!!」
腕を引かれて宴にデビューした。
秘密の仮面舞踏会。
とは言っても、貴族の嗜みじゃなくて野性的な、魔法使いの宴だ。
みんな思い思いの恥ずかしい水着で、バカ騒ぎしてた。
「こ、これ?!」
「そ、中東の大金持ちとかなら正に、すっぽんぽんかも知んないけど。人工島でも日本だしさ、こんなにハッちゃけたら我に返れば、気恥ずかしくもなると思わない」
思う。
先ず、なんで服剥いだんだろって苦悩する。
それと裸踊り。
水着たって下着と大差ないし、布いち枚の気恥ずかしさが蘇るわけで。
「みんな酒でも飲んでるの?」
「さあ、その場の空気ってのもあると思うよ」
そうだ。
下階へ降り立つ前の香り。
「抵抗できる人は少ないよ。あれ、媚薬みたいなものらしいから」
なら、なんでが飛ぶ。
なんでエサちゃんは平気なのか。
聞くのが怖いけど。
「八ツ橋が製品化した、わたしの商品だから」
香水の開発にアルバイトしてるってったな。
これが。
「ほ~ら、呆けた貌しない。わたしが恥ずかしい!!」
額が当たる。
まあ、ごちんって感じで。
「媚薬の評価もあるけど、それだけでハイには為らないと思うよ。たぶん他の要因も交じってると思う」
当局が絡むキャンディの可能性。
袖先を引かれ、
主催者の魔女の下へ。
エサちゃんが軽く挨拶をして、飴の包みを貰った。