- C 980話 魔女の宴に呼ばれるまでの日々 10 -
「ほら、目当ての招待状。魔女から来たよ?」
エサちゃんが耳元で甘く囁く。
尻の割れ目、乗馬用ズボンの縫い目に沿って指が這う中。
ボクらふたりの下へ黒衣のローブが現れる。
いかにも神秘的で、魔法使いっぽく。
しゅるるって影が尖塔状に浮かび上がると、人が出てきたんだ。
ファミリアをOFFにしたら、どういう。
「それ、ONにしたままで。折角の演出で、手品のタネを見るのはマナー違反だよ?」
流石に。
エサちゃんでも静かに怒る。
ああ、これが怖いんだ。
這ってた指が菊の門に刺さった感じがして。
苦悶の貌へ。
ボク、他人にはどう見えてるの?
◇
黒い封書に獣の匂いが残る蝋印がある。
ヨーロッパの雰囲気があるからか、手紙ひとつとっても。
「さて、ファミリアをOFFにしても封書と封蝋は変わらず。これが件の“魔女の宴”への招待状だとして。凝り性もここに極まれりじゃないかな?」
更衣室に残った、ボクとエサちゃん。
というか外から鍵を掛けられ、出られなくなった。
可愛い苛めだろう。
「そう? 噂の絶えない宴のようだけど」
男女が一糸まとわず、まぐわい倒すとかなんとか。
とくに噂好きの女子寮から聞いた囀りだが。
真実も半々として考えるなら。
参加者の気恥ずかしさが、噂にして噴出してるとも言えた。
「まさか?」
「出てない、出たことない。わたしはマルちゃんの柔らかいところが好みで、最後まで齧りつきたいのをぐっと堪えてるんだから。わたしの純愛を疑わないでほしいなあ」
ふたりして下着同士なのも忘れるほどの熱量。
な、なんか...
こ、この、この部屋、暑くない、ですか?!!
目が回る。
女の子の匂いがする~
そりゃそうだ。
ここ更衣室だし。
ボクはぐるんって目が回って気絶したっぽい。
◇
“魔女の宴”と呼ばれて久しい秘密の舞踏会だけど。
仮面と黒衣のローブに、麻地のワンピースを着る地味な催し物である。
10年や、20年前までなら。
豪奢で贅が尽くされた仮面舞踏会だったらしいんだけど。
アンダーグラウンドに潜らざる得ない理由が出来てからは、死霊ダンジョンの名所・墓地から地下へ。
「うっわ?! ゾンビがうじゃうじゃ居る!!」
ボクが柄に手を掛けたところで、エサちゃんから後頭部が叩かれた。
ぱすんって乾いた音だったけど。
目が上下に動いて気持ち悪くなる。
「それ、演者だから。コスプレイヤー、雰囲気を楽しんで自治会が率先してるの」
ほう。
では、この真夜中では、その?
「ゾンビは夜に出ると、精神衛生上良くないってことになってて... 昼ゾンビと、夕方ゾンビの2パターンしか放たれないの。早朝と深夜はこうやって有志の方々が、怖がる女の子のおっぱいを揉みに来るんだよ!!」
で、犠牲になったのがボクなんだが。
エサちゃんはボクを差し出しながら、地下へ。