- C 978話 魔女の宴に呼ばれるまでの日々 8 -
ボクと三つ首ドラゴンの対峙まで回ってた。
『――まあ、色々面白いものは見させてもらった。尾の横薙ぎの意図を汲み、伏せて回避する。見事だよ、ちんちくりん......アレが無ければ、あのパーティひとつから幾ほどの経験値がこちらに流れてたか分からんかったかもなあ?』
やっぱり、こいつらも。
閉じ込められた環境のボスたちが持つ大量の経験値が気になった。
役小角教諭は、友人のコジュっていう同僚から、モンスターの都合を付けて貰っている。
ダンジョン特有の、領域内であれば一定時間で復活する。
これがあっても貰える経験値に差があるという。
この差が気になった。
初見殺しのダンジョンなら。
考えて、ぞっとした記憶。
『おしっこか? まいったな、ここにトイレはないぞ』
ドラゴンの冗談かな。
それとも身震いでも見られた。
『ま、それはそれだが... お前さんの挑戦権は失効しているから、それを告げておこう。故に、そうだなあ......うむ。我に拝謁した褒美として参加賞、そうだ、参加賞をくれてやるのだ!! また次に同じことを2回ほどしたら、異例だが大きなヌイグルミに取り替えてやるから、ちゃんとアイテムボックスに入れておくのだぞ!!』
暫くすると、まばゆい光に呑まれたボクは、塔の外へ強制送還された。
100層ダンジョンへの立ち入り禁止10日っていう、処分のペナルティも受けて。
◇
で、だ。
中継が終わった後はもう。
全校生徒というか、“調和”の寮生から物を投げつけられる痛いイベントに遭遇。
PvPは誰に挑んでもいい事になってるけど。
それは専用フィールドだけの話だ。
今まさにボクはすべてを敵に回したとこ。
いや。
すべてじゃない。
エサちゃんだけがボクを優しく迎えてくれたんだ。
彼女が在籍する“支配”の寮で。
「これ、参加賞だって」
モンスターではなく、ドラゴンのぬいぐるみ。
手のひらサイズで威厳は無いけど愛嬌はある三つ首竜のだ。
「ありがとう」
貰ってもいいよねって聞かれた。
彼女にはドラゴンをプレゼントする予定だったから。
「おやおや、とんだ手癖の悪い転入生さまだな?」
寮長の四年生。
“支配”の塔なんて言われてるけど、悪役令息とか令嬢しか居ない、はみ出し者が集まった自己中な気風。
その寮長がボクをエサちゃんから引き剥がすと、
「見事だったぞ!! 流石は期待の新星だ。“調和”だけではないが、聖女クランの奴らは鼻持ちならなくてな。久々にスカッとさせて貰った」
ぎゅっとハグされて。
苦しさの余り気を失いかけた。
「いあ、すまんすまん、つい」
エサちゃんの腕の中にもどされて。
これでボクもデビューしたわけだ、悪役のロールプレイングに。