- C 977.9話 ギルド中継、白熱の暴挙を目撃 3 -
『おっと、今度は何をはじめたんでしょうか?!!!』
進行役が、解説のギルド長へ。
ギルド長も口の中をもごもごさせつつ、
『(喉が小さく上下して)恐らくは、聖女のパッシブスキルについて解説するようですね。しかも、被験者を用意しての実地のような。言葉を紡がれても、こればかりは本人も、ファミリアから通してみるスキル理解深度には限界がありますからねえ』
『と、言いますと?』
◇
魔法小銃の初弾に装填されてた魔弾は、氷属性の“フロストスピア”。
狙撃スキルは、不意打ちが条件のバフ攻撃。
条件下では必中にして、鉄壁貫通と確率即死効果が乗る。
当たりさえすれば、人はほぼ即死。
火属性の怪物なら致命傷という。
えげつないと言えば、えげつないけど。
ボクが渋ってると。
『ちんちくりん、構わぬ撃ち込めばよい。すぐに謎が解けるから』
なんて言われたら。
ナムサンなんて唱えながら、オリバー先輩を撃つしかない。
中継の画面から音が消えた。
スローモーションかってくらいの時間を皆が共有して、オリバー・オスナージュの身体が後列よりも後方へと飛んで行って肉塊が大きく2、3度バウンドしてた。
その直後に悲鳴である。
テンプレの――「俺、何かやっちゃいました」なんて台詞、用意してたって咄嗟に出るもんじゃなく。
やった張本人でさえ、絶句だ。
聖女を真っ先に葬ったのは、それが“戦争”の最善策だからで。
延命できないようにすれば戦意を挫くのは簡単だからだ。
でも...
ドラゴンは哄笑して。
肉塊の方へ腕を伸ばして、爪の先当たりで転がしてた。
『ふむふむ、見事な一撃よ! 80層に居るフロストドラゴンでも見ているような、魔弾である』
おいおい。
ボクを化け物みたいに讃えるなよ。
『では、蘇生させてやろう』
◇
『これが聖樫魔法盾の弱点ですか』
意味ありげにギルド長が呟いた。
腕で口元を隠し、何か深い事を言ったような雰囲気までだしておいて。
喉が上下に動いてた。
こいつ、何か食ってやがる。
『それは?』
気づかない進行役。
『聖女はパッシブで、最初からこの。聖樫魔法盾が使えます。自身が最前線に立って持ち前の絶対防御を酷使していれば、おのずとスキル熟練度がMAXにでもなって上位の神域、さながら王城のようなユニークスキルへと進化するんでしょう。しかし、普通は守られる立場のロールです。今までの卒業生にも、ベ〇バラのオス〇ー気取りのお嬢さんもくらいは居ましたが。50年、矢面に立ちなんて』
なんてことー的な絶望感をライブ中のふたりが演出し、
塔の外で打ちひしがれてた、即死一発退場の聖女にもカメラが向けられてた。
100層ダンジョン塔攻略の最有が今、棄権したチャイムが鳴る。
中継はここで終わらず。