- C 977話 魔女の宴に呼ばれるまでの日々 7 -
えっと、この状況をどこから話せば。
いや、まあ、正直に言葉にすると、だね。
ボクは今。
4年生の~
いや先輩方の聖女クランと対峙している、構図なわけだ。
◇
同学年の聖女グループが御世辞にも強くなかったので、正直。
そのぉ~舐めてました。
たかだか2個上程度の年上でしょ、お兄ちゃんとかお姉ちゃんって呼んであげれば、喜ぶ人種じゃん。
なんて思ってた頃が、この司馬丸恵にもあったんですよ。
でも、でもね。
めっちゃ、睨んでるし。
めっちゃ、強そう。
めっちゃ、逃げ出したい。
地上100層もあるダンジョン塔の60層にあるボス部屋に。
ボクと、聖女クランと、三つ首ドラゴンの三つ巴が。
ヤベ、気が遠のきそうになった。
「ったく、こんなところに低学年が! いや、今は其処ぢゃないな。邪魔をするのか、それとも横取りか。返答次第では後輩と言えども容赦はしないぞ!!!」
正に王になるために教育されてきました的な模範質問。
いやー、こんな人たちに喧嘩売りに来ましたなんて口が裂けても言えない。
ボス部屋で、ボスに挑めるのは1パーティのみである。
これが部屋の基本ルールだ。
ボクは、そのルールの裏をかいて。
こっそり潜り込んで、今、この場にある。
目的はエサちゃんにとびきりの魔物を用意する為である。
やっぱりお姫様には“ドラゴン”が御似合いだ。
「答えないか...」
小さく息が吐かれた。
呆れたってのもあるだろうし。
ボク個人への批評も入ってるだろう。
こいつはダメだ的な。
ルール上、1パーティのみがボスへの攻撃権を有する。
しかし複数のパーティが部屋に入ることは出来ないよう枷が掛けられてあるのも事実。
あの溜息は、ボクが条件を無視して、パーティのひとりとして監視の目から逃れたものに向けられた。
それだけのレベルがあるのにって。
勝手に落第者の烙印を押したのだ。
ボクは首の軟骨を鳴らした。
無意識だけど...
「――っ、こっちにも事情があるんだよっ!!」
舌打ちも撃ってたかも。
ボスはパーティの個数なんて気にしない。
攻撃したいときに、身を捩りながら細い塔だってのに、しなやかで鞭のような尾を振り回してくる。
横に払ったのはそれが一番最適だと思ったからだが。
◇
ボクは石の畳の床に密着するよう伏せて回避する。
聖女クランの前衛はバックステップ、中段のアタッカーが飛んで回避した。
後列と聖女は、魔法盾でブロックして次の攻撃に備えたんだけど。
敵はボスばかりじゃない。
「止せ!!」
王太子の声が部屋に木霊する。
ボクはすっと立ち上がって、
「魔法小銃、召喚」
20名以上とドラゴンの目の前でマスケットを召喚した。
もちろん腰にはショートソードほどの例の倭刀が提げてあるけど。
こんな場所なら。
先ずは――聖女を狙撃する。
乾いた音と、タンク・ロールの王子ふたりが手を伸ばして、制止させようとしてた。
そんなんでボクが止まる筈もないことなのに。
「なんてことを!!!」
空しい声が。