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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
人工島の寄宿学校
2117/2362

- C 975話 魔女の宴に呼ばれるまでの日々 5 -

 春の大祭――。

 貴族学校らしいイベントと言えば、イベントだ。

 2年生になった聖女と公爵令嬢ふたりは、(物語上)立場が変わり、優劣の差が生まれ始めている。

 平民出身者である聖女は、地道に人脈形成に努めて周囲からの評価が高くなる。一方で公爵令嬢は、王太子の許嫁という立場に胡坐をかいた言動に、株を落としていくというテンプレだが。


 今期に入っても。

 1年生から状況がひとつも変化がない。

 公爵令嬢ロールを買った、八ツ橋エリザベート嬢の淑女然が美し過ぎて。

 周りが霞んで見えるようだと言われてる始末。



 当然、大祭の前夜祭でも。

 エサちゃんに群がる令息らの人気は、他のご婦人方のそれとは一線を画すもので。

 どっちが聖女か判らないほどの魅力なのだ。

 1年生の頃は休みがちのエサちゃんは、正に高嶺の花。

 儚さと、壊れ物注意めいた薄幸の美少女。


 しかも、ご婦人方の他に男装の麗人からも人気が高く。

 今でも隠れファンなる地道な活動家もあるって話。



 ボクっすか。

 ええ、この間の一件で酷い目に遭いましたとも。

 休憩室でしかないエサちゃんの部屋の前で、今まさに忠犬たらんとする従者と厄介者のボク。

 ふたりの一触即発のせいで。

 知られんでもいい二人の秘めたる事情の暴露。


 凄かったねえ。

 男装仲間からは『がんばれ!!』って励まされ。

 隠れファンからは『殺す、マジ殺す!』って切り刻まれた殺人予告状が、藁人形とともに入ってた。

 魔法使い養成学校だから、さ。

 藁人形とか、マジ、怖くね?!

 呪わないでくださいよ。


 マルちゃん、泣いちゃうよ。



 前夜祭と呼ばれるイベントは3日間行われる。

 ダンスの手配などは、後夜祭の方で行われるので――この前夜祭では、それぞれの狩人たちが意中の令嬢に、己の魅力をアピールする一大決意表明の場である。ボク以外は、皆、2回目の巡り合わせなので大分勝手知ったるな、雰囲気だが。

「ルージリー公爵令嬢、エリザベートさま。我が、猛り狂う薔薇こころをお納めください」

 深紅の薔薇を胸から抜き取ると、エサちゃんに差し出す“王太子”がある。

 うむ、みんな男性は同じ()()()()のようだ。


 猛り狂う薔薇こころか。

 キザだなあ。

 エサちゃんも困ったように苦笑してるようだが。

 なんか、視線がチクチクするんだよなあ。

「殿方から貰うのが礼儀なんだけど」

 って、豊満なバストと腕の中でいっぱいの薔薇を抱えるエサちゃんが、ボクの傍にまで。

 催促する淑女は、ひとつ品格を落とすのだというのだけど。

「えっと、ボクは無作法ものだけど」

 薔薇の一輪も持ち合わせていない。

 冒険者ギルドでそれとなく情報は集めたけど。

 まさか贈る方だとは。

「でも、わたしはマルちゃんからも欲しいんだけど?」

 ふむ。

 可愛らしいことを言ってくれる。

 妬けちゃうぞ、ボク。

「だから、一番、大きな獲物でハートを射止めて欲しいな!!」

 そんな台詞を吐いた淑女は、校内史上僅かだ。

 1期生の聖女と、35期生の悪役令嬢のみ。

 今、歴史が。






「マジ、っすか?!」


「そそ、マジで」

 エサちゃんの笑みが、なあ。

 これ砂糖と間違えて、怪しい粉を運ばされた時のソレぢゃないですかー。

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