- C 973話 魔女の宴に呼ばれるまでの日々 3 -
「話を替えましょう。恐らくは、戦闘は連続でしたでしょう? 補給はどうしたのですか」
おっとそっちへ飛ぶか。
ふむ。
モンスターの腸の中に潜り込むってのは、気分のいいものではないよな。
ボクも緊急だったからヤっただけで。
必ずそうしたいわけではない。
メリットとしては。
フロアボスという凶悪なモンスターの匂いを纏うので。
雑魚が寄り付かなくなる。
襲ってこなくなるというメリットがある。
けど。
ヌメヌメ、ベトベト、ヌルヌルの不快感がある。
パンツまで汚れる覚悟が必要だ。
「ハイポーションと、ハイマジックポーションの飴玉、舐めてました」
エルフさんの眉がつり上がる。
「飴玉?!」
「は、はい」
正直に言ってるのに、なんか顔芸が怖いんだけど。
ボクの冒険用に購入したポーチには、ハイポーションとメガポーションを原材料とした液体に、蜂蜜などの(厳密には不純物がすごくすご~く多いんだけど)溶剤で固形化して“飴玉”にすることに成功した代物が入っている。
素直に中身の品物をギルドに見せたら、画期的だと褒められた。
ま、それはいい。
考えて調理場にて何時間も籠った甲斐はあったんだけど。
吹聴するような事でもない、とボクは考えてる。
「これは素晴らしい事だよ!!」
褒められると、それだけ余計にため息が出るもんでね。
天邪鬼と言うか。
褒められていないというか。
いや、違うよ。
心底、誰かの記憶に残りたくない。
メガポーションの方も、似た感覚で賞賛される。
尻がムズ痒い。
「こういうことに発想が回るというのならば、他にどんなものがあるんだい?!」
めっちゃ胴が長い猫が絡んでくる。
首を絞めるのは、や、め、て、、、
「マナポーションのグミ化と、オド・リカバリー・シールかな」
マナポーションは、それまで飲み過ぎると危険というエナジードリンク剤で売られてた。
1日3本までの飲用が医療関係者から注意喚起されてたものだけど。
それらの依存性や中毒性、あとは、消化器系に腎臓への過負荷の毒性を取り除いたグミにした。
一応、ブドウ糖が使われているので食べ過ぎには注意が必要だ。
糖尿病になってしまう。
「糖尿病くらいポーションか、ヒールで!!」
「それは本末転倒ですよ。どちらも薬の域から出てないんで、用法と容量は守ってください」
ボクがいう事じゃないけど。
じゃ、もう一つの方ね。
オド・リカバリー・シール。
体内の魔法回路がオーバーヒートすると、マナから回復を試みてもしばらくは魔力を練り込むことが叶わなくなる。例えば、生活魔法のひとつ“光を”で、周囲を明るく照らしたいと考える。
この僅かな光源の調整が難しいと感じるくらい、倦怠感に襲われるんだけど。
これが魔法使いの疲労困憊の姿だ。
その状況の打破にシールを腕か手の甲に貼るというもの。
「うわ!! すーっと、なんかひんやりして、きもちい!!!」
受付嬢さんら、全員がボクのシールを使って気持ちよくなってる。
ちょ、それ、数少ないんだから!!!
「これ、商品化しましょう」
「は?」