- C 969話 攻略対象に喧嘩を売る 4 -
30階層になる初心者を惑わす、所見殺しのダンジョン。
初心者なら5、ないし8人の大所帯で臨むのがセオリーだとされる。
このダンジョンでは休める場所が少ないので、僧侶系回復士の援護・支援が必須とされているからだが。
逆に考えると。
必要な物資を持てるだけ持って、都度、休憩できる場所の確保に努めることができれば。
最短での攻略も可能という事になる。
机上の空論だと笑うやつもあるんだろうけど。
これ、紛争地のいちシーンに似ていると思わないかな。
敵対勢力の兵士と遭遇して銃撃戦で命を落とすのなんて、市街地でもない限りはゼロに近い。
紛争の殆どは見捨てられたジャングルの奥地だ。
それらの国に資源がないわけじゃない。
密林と化しているジャングルだって樹齢数百年、数千年の木材があって。
これで商売できれば輸出大国になれる。
いや。
森は祖英の霊が棲まう神聖なものだといって、武器を取った少数民族も多くはなく。
また森の地下に眠るダイヤを巡って戦った地域もある。
こうした地での死亡率は、幻覚と飢えと獣による襲撃だ。
だから、ボクは30階のダンジョンでは倒した獣たちの腸の中で暖をとって過ごした。
もちろんフロアボスだ。
◇
面白いことに。
フロアボスを倒すと、宝箱の外に上階へあがる階段が出現するけど。
その部屋を出ない限りは倒した魔物も消えることがなかった。
「時間経過で沸くのかと思ったけど、これは安全圏にも成ってるってことか」
一応、後に論文にしようと調査もかねたけど。
魔物の腹を裂いて、血袋の中で仮眠を取る方が優先されるようになる。
喧嘩を売ってきた、アルベルト・バッテントレルだけども。
ボクが専有している部屋の前で、無駄に数十分も待たされた挙句、無駄な戦闘まで熟してた。
と、いうのも。
ボス部屋が解放されないと、小物たちが異常発生する仕組みのようだ。
これが初心者に向けられたなら、パーティの全滅だってありうるわけで。
《糞、なんだってボス部屋が空かないんだ!!!》
ダンジョンにはタイムアタック意外だと、他の腕試しな冒険者が多く潜っている。
たまたま迷惑なボクたちに遭遇しただけの人もいるので。
ま、ごめんちゃいね。
さて、この所見殺しのダンジョンの必要構成メンバーによるタイムアタック記録は。
BIG4と聖女様チームによる、6時間24分が最速とされる。
現在、これを破れた者はいない。
また、物好きなところで。
ソロアタックも記録があって18階層までで8時間12分――記録保持者はアルベルト・バッテントレル氏、その人である。だからか、まあ、暑苦しくも自分の土俵でマウントを取るつもりでつっかかってきた、そういう事だ。
小さい男だなあ。
ただし。
それまでは――だ。
結論から言うと、30階層のソロアタックが、記録更新されることになった。
アタックホルダー。
黒き稲妻、マル・パールライス。
ボクが4時間59分でクリアしました。
なんか、ごめんなさい。