- C 968話 攻略対象に喧嘩を売る 3 -
ボクは、前日の野外訓練場に居た。
第二王子を負かしはしたけど、純朴天使なマルが心に負傷した現場でもある。
別視点で見ると、苦々しく感じる。
「第二王子のアレは大きいのかもしれないけど、マルの心を傷つかせる為に幻術とは。舐めた真似をする――聖女とは言っても魔女は、魔女ってことか」
誰かが据わってた後に魔術の痕跡。
草を編んで焼かれた魔法陣がある。
数刻もすればファミリアからも、痕跡が辿れなくなるものだ。
◇
その日から、単位とりに勤しむことにした。
単位の取り方としては幾つかの方法がある。
1年で必要な単位は20余り。
4年で最低でも80は必要だけども、研究発表や論文、新しい魔法の開発からファミリアの改造などでも、必要な単位習得が可能と言うのが校風だ。聖女を中心とした攻略対象という王太子含めた、BIG4なるグループは、だ。
この課外授業に注力しているため、目立たないようで。
逆に2年のブランクがあったエサちゃんが目立つのは、学年トップクラスの成績だからだ。
まさに女帝。
オール満点とか、どんな頭の造りしてるんだよ。
ボクは、先ず。
学校の“冒険者ギルド”にライセンス登録する。
ファミリアに記録されている、デイリークエストの消化と。
これまでのソロ・アタックデータの照会も行って――ランクは破格の“C”発進。
目立たなくていいのに。
早速、校内新聞に『超新星、現る!!』なんて見出しが載った。
編入生パールライス子爵、ちょっとお転婆な末姫さまの冒険がここに開幕。
なんて、うっすい記事が出たわけだ。
これはBIG4と同じ路線なので衝突は不可避。
実は、これには理由がある。
エサちゃんとの約束は忘れていない。
彼女のコミュニティにあった、少女の捜索。
ハナちゃんの調べによると、少女の姿は地下墳墓で行われた“魔女の宴”の直後から消えたとされている。この集まりは、秘密主義で通っていて手がかりは現時点で皆無。
まあ要するに、会合に呼ばれるだけの実績を積む必要があるということだ。
例えば――
「授業を抜け出して抜け駆けとは? 異国の子爵とは卑しい者ということか」
光の反射で眼鏡しか特徴のないBIG4がひとり。
女神正教会、智の枢機卿が令息。
アルベルト・バッテントレルが、ボクの目の前にある。
そういうお前だって抜け出したんだろって。
言うと言葉の応酬になるんで、そこは時間の節約といきたい。
「ボクは単位が足りませんからね。校内の補助施設で地道に稼がないといけないんですけど... この場合は、先輩とか呼んだ方がいいですか? そうですねえ、サボり同士ですし」
ああ。
喧嘩売っちゃったよ。
軽めのダンジョンだったし、深奥の薬草“ポプテピピック”採集クエスト。
どんなにかき集めても、単位は2が限界だけど。
魔物を倒した数に応じれば、最大5もの単位が貰える美味しい内容。
逃すわけには。
「ふむ、薬草採取か」
「は、はい」
「では、タイムアタックと行こうではないか!!!!」
はー?!
そ、れ、は、な、あー、初見殺しだろがー!!
「怖いのか?」
糞、糞、糞。
このメガネはー。
やってやろうじゃないか、ボクが本気出せばどうなるか。
思い知らせてくれる。