- C 967話 攻略対象に喧嘩を売る 2 -
役小角女性教諭が、青年に腕を差し出した。
「勝負は勝負ですよ? 王子殿下。王太子さまの意を汲んで、率先してロールプレイに投じたのは加点対象ですけど。私闘、決闘にローカルルールを持ち込みたいのであれば、始める前に相手方。そして教諭であるわたくしに、伝える必要がある事を2年前にも散々言いませんでしたか?」
転がってた王太子だと思ってた青年が、だが。
こいつはその次男坊ってことか。
しかも、2年間なにも学んでねえ。
マジか。
いや、待て。
学ぶ機会ってのは環境は大きく関係する。
よくある乙女ゲーの解説本には。
第一王子は、勤勉とか真面目、優しいなどの性格的ワードが並ぶ。
これは攻略対象が見目麗しきイケメン故の書き分けなのだ。
見渡す限りにイケメンかブサメンでも、特徴が無いと――平面に等しいキャラである。
肉付け大事ぃ~。
「兄貴ぃー!!」
半泣きしてるが如くの甲高い声。
へたりこんだ弟君の先に、金髪補正された長髪にして長いまつ毛のフランスパンが。
立たなくても座高が高いってのは、ひとつの特徴だろう。
《足は短いのだろうか?》
「キサマ、兄貴について今、不逞な考えを持っただろ!!」
吠える巨根。
もとい、第二王子。
◇
黒山から唐突に立ち上がるBIG4。
第二王子の解説本には、性格に難があり、怒りっぽくて、出涸らしって言葉に傷ついているとか。
そうした負の面を、聖女が癒してくれるので懐かれやすくなる。
割と簡単なルートなので攻略は面倒じゃない分、やる気も削がれて地雷を踏みにいかないのだ。
第二王子ルートは地雷だ。
「お、おい! 負かしたからって、いい気になるな!!!」
ん?
「こ、今回のはたまたまだ! 俺の得意とするのはブロードソードで。...その、お前に負けっぱなしだとか、思うんじゃねえぞ...」
んー。
なんだ、このデレは。
ボクは、彼を見下ろしている立ち位置だ。
教諭の手を借りて目線が逆転しても、だ。
第二王子は頬を赤らめながら、
「次に再戦するのは、俺だからな!!!」
って捨て台詞が。
黒山に林立してるBIG4の方々と少々、温度差が違うような。
ん? ん... んー。nんんんんー!?!!
これは、
地雷踏んじゃったか??!
後日。
男装寮にくたびれた果たし状が、届いた。
方々を回って来たらしく。
いろんな消印が押されてる。
学校の郵便エリアは狭いけど複雑で。
差し出した場所の半径数十メートルくらいしか動かないんだわ。
果たし状くらいボクと面が合う、教室で渡せば問題も少なかっただろう。
「お嬢さま?」
ハナ姉がメイド=侍女の態を崩さないのは、寮が個人部屋だとしても障子に目あり、壁に耳ありだからだ。
大事なことはファミリアを通した念話のみ。
その念話も盗聴の恐れがあるので、早々にプライベート回線の術式構築を完了しておいた。
「これじゃあ、果たし状じゃなくて...」
思わず、ため息になった。
書簡をハナ姉に託し、ベッドへ飛ぶボク。
なんなんだよ、攻略対象って。
恋文じゃないか。