- C 965話 初期イベント処理中です 5 -
乙女ゲーのような雰囲気を残しつつ。
どこか中世風の佇まいも見せる不思議な学校――
4年制で進行するんだけども、単位はクエストの消化で獲得できるので、自分なりのペースで授業に取り組めるスタイルの高校で、卒業パーティでのダンスパートナーを見つけ出しておくのも、プログラムの一環だという。
確かにロマンチックなのが好きなエサちゃんらしいチョイスだが。
彼女はなぜか険しい道のりを選択してた。
“悪役令嬢”なるロールをプレイしている。
性格からしたら、御姫さまっぽいのが好きなような気がするんだけど。
今は目の前の情報を処理する必要がある。
体操服姿の男子が一歩前に出て、ファミリア越しだと手袋をボクに投げつけたところだ。
中世のとある地域だと、それが意味するのは私闘であるのだけど。
ファミリアをOFFにしてたボクの気になるのは。
まあ、イケメンだと思う男の子の股間の膨らみだ。
《いやあ、あれデカいってもんじゃなく勃ってるよね?》
なぜだ。
ボクは制服のままだし。
実はアレが普段のサイズで、左に横倒しになっているのは。
いや、難しい。
「どうした? 怖気づいたのか」
ああ。
まあ。
そんな太いのは初めてだし。
まだ成長するかもなら、末恐ろしいかも。
「あ、うん。余りのデカさに、ちょっと悔しいけど遠慮したい気分です」
ファミリアがONになったままの生徒たちからすれば、だ。
王太子が手袋を異相な雰囲気の留学生に叩きつけたところ。
ぴっちりと張り付く半ズボンに浮き上がる凶悪な竿に、生徒の誰もが気が付いていない。
本人以外は。
まあ、当然。
なににボクが驚愕したのか分かってる当人の顔はみるみる赤くなり。
「ファミリアをONにしろ!!!」
って、自分で恥をさらすわけだ。
OFFにした生徒からの悲鳴のような嘲笑。
◇
気を取り直して。
ファミリアをONにした世界に戻る、ボク。
マル・パールライス子爵令嬢は男装の~だ。
同じ趣味の方々から指笛が鳴らされて――。
私闘のイベントが今まさに始まろうとしている。
異相っても。
アラビアのロレンス風味で味付けしてる。
最近、発掘したパッケージを鑑賞したので、つい。
ターバンにマフラーで、軍服姿。
乙女ゲーの中世風洋装って、どことなく15-16世紀付近のフランスを彷彿とさせつつ。
イギリスとドイツっぽいところが文化圏に入ってる感じ。
ボクと対峙してる王太子も、その服装がちぐはぐというか。
胸元の襟の幅広さと、厚みは異常だし。
袖の折り返しにヒラヒラのレースが、ね。
時代がバラバラな感じがする。
ま、指摘したところで。
「ほら、剣を獲れ!!」
レイピアみたいな剣を顔の前で突き立てて構えてる。
そいつは“礼”であって、構えじゃないし。
「いえ、結構です。好きなように攻撃してきてください」
はっ、ちょっと生意気だったかな。