- C 963話 初期イベント処理中です 3 -
魔法学校の定番と言えば、水晶球に魔力を投影させて図る方法と。
得意魔法を詠唱させて的となる人形や標的に当てるものだ。
このテンプレートはほば確定的に発生する。
そもそも論で言えば。
単一対象に魔法を当てることは、番った矢を射るよりも難しい。
なにせ、無詠唱だとしても動く標的の未来予測なんてのは確定しないのだ。
矢や銃器のそれは、だ。
経験から来る、武器の初速値が分かってて相対する標的との交差位置とを。
計算しているから当てられる。
魔法はその点。
事象そのものの確率を弄るほどの事を成さねばならない。
絶対当てるは、チートなのだと。
さて、動かない的に当てる行為だけども。
ため息が出そうだ。
いや、あくびも。
「この標的に、これの鎧はそう簡単に壊せませんよ!!」
フラグを立てるな、フラグを。
水晶球みたいに砕けるぞ?!
◇
無自覚主人公がいるとしてだ。
フラグが立った的が壊れるというのは、10回に1回はあるんだと。
わりといい確率ですね、だ。
後にエサちゃんから聞いた話だけども。
入学式のイベントでも、どや顔の王子様が壊れにくい鎧にひびを入れたという。
その後、宮廷魔法使いの孫という魔獣使いが、だ。
派手にぶっ壊したというのだ。
もうテンプレだろ、そこ。
ボク?
ボクは魔法剣士だから獲物の刀で切りつけて――
派手に相殺された挙句に、吹き飛ばされた。
攻撃の寸でに的対象に“抵抗強化”と“魔法小盾”を与え、ボク自身の攻撃が通らないようにした。
後は、自力で吹き飛ばされたような演出に励んだのだ。
魔法剣士としての実力も測定不能にした。
筈だった。
見てないと思ってた実技評価官ってのは節穴じゃないってことだ。
普通は派手にぶっ壊すことを考える奴が多いから。
それらの処理もテンプレとなっているという。
ふふ、エサちゃんからも爆笑されたなあ。
「その刀、見させてもらっても?」
女性教諭はボクの腰に提げられた獲物を手に取る。
ファミリアをONにしても、OFFにしても西洋風の飾り鍔の付いた倭刀だ。
片手でも扱える長さに収めてあるけど。
場合によっては、両手で柄を握る事も出来る。
「見事な技物ですね!!」
獲物が褒められるのは悪い気分はしないな。
実力が伴ってるかは別にしても。
獲物を選んだボクの眼力が褒められたようだし。
「構内のガラクタ市で、でしょうか?」
はい?
ガラクタ...
「いえ、ボーナスクエストクリア後に出た通販です。届くまで半信半疑だったんですけど、ボクの体形や要望を聞いてくれて、こんな倭刀に仕上げてくれたんです」
いい買い物をしたなあって言葉が続く。
もっとも、獲物を見ながら、彼女たちはボクの品定めをしてた訳で。
ステータス――
魔法剣士Lv.30
これらの情報は教師たちに筒抜けになってた模様。