- C 962話 初期イベント処理中です 2 -
いらねー演出をありがとう。
エサちゃんからの事前情報により、ボクはチュートリアルクエストのカンストに臨み。
その後のボーナスクエストもクリアした結果。
本来は、編入に際するハンデという枷をまったく受け付けていない。
この差は当事者であるエサちゃんを通して見ているので、間違いない筈だ。
もっとも。
エサちゃんもボクのような宙ぶらりんな無職とともに、ゲーム三昧だった為。
使用人さんらが「このごく潰しども」とか「寄生虫め、自覚しろ!!」なんて言葉が吐かれるように、悪い道に誘ってしまった結果、学業が疎かになっている。
すでに2年のブランクが空いているという、クラスメイトの差がどの程度かは。
この時点では、流石に正確なところ分からない。
けれどもだ、だ。
ボクは、職業を“魔法剣士”ってのに覚醒いるのだ。
その後も、フリークエストが1日に3回解放される、デイリークエストで“魔法剣士”のレベルを上げられるだけ上げておいた。編入なのですでに出遅れている上に、絡みづらい子爵(男装)令息とされている訳で、悪役令嬢とも或いは、主人公であろう聖女サイドとも絡みづらい立ち位置からスタートするであろう。
が、個人的には...
これまでの流れとして、ちと、やり過ぎた気がしないでもない。
「わ、割れた?!」
女性教諭の大袈裟なアクションと共に。
後方に詰める、検査員の方々も大袈裟に席から飛びあがってた。
これって演出なんでしょ?
そんなにワザとらしくオーバーなリアクションなんて要らないって。
「えっと、計測し直しですか?」
ボクはテンプレ通りに。
“何か、やっちゃいました”ばりに肩を竦めてみる。
ああ、面倒だなあ。
「もっと大きな水晶塊を」
まだ、やるんかよ。
◇
編入手続きが今まで例外的に無かった訳じゃない。
この半世紀は濃縮還元でもしたような、特例なんてものが度々あったという。
ま、こんな面白そうなシステム。
一般で知れば、編入したいってなるのも理解はできる。
ボク自身、仕事じゃ無ければ関わり合いたくはないが。
マジ、がっこ、嫌いなんで。
で、だ。
その例外のみなさんは漏れなく、ごく普通だったという。
チュートリアル・クエストに気が付いた猛者はある。
が、デイリークエストまでを熟して準備万端に臨んだ者は居なかった、ゼロである。
そ。
例外を今、この時代にて誕生させたのだ。
しかも巨大ガラス玉...もとい、巨大な水晶塊を見事に粉々に砕いて見せた、子爵令息が。
《ステータス異常かな?》
いや、ステータスに問題はない。
アホみたいに4桁、5桁あるわけじゃない。
せいぜい3桁の手前だ。
150とか、170なんてのが凸凹にある。
ボクのゲームレビュー・ブログのPVみたいな数字だ。
ブログランキングでは常に“圏外”って烙印を押された黒歴史である。
「それでは、気を取り直して」
「あ、ちょっと待ってください」
女性教諭が締めに入ろうとしている。
魔力測定のイベントなんだ、驚かせたのが測定室の職員だけと言うのは解せない。
ここはもっと。
いや、ボクは目立つのが目的ではないはずだ。
ここで何をしたいというんだ。
「ま、魔力の推定値は“SS”ですね!!」
上から“SS”、“S”、“A”、“B”、“C”、“D”、“E”、“EE”って分かれている。
最上位の“SS”は勿論、計測不能に与える便宜上の称号めいたもので、実際にはファミリアから通して見える“ステータス”で総量が見える。成長の度合いから4桁や5桁に届く可能性がるとされるものだ。
逆に最下位の“EE”は魔力量が極めてゼロに近いものだという。
最上位同様意味の違う、測定不能を指しているんだけど。
卑下することは無い。
魔法として飛び道具が期待できなかっただけの話だ。
過去にも“EE”だった先輩が、魔法使いとして卒業して人工島の自衛隊・師団長にまで昇格したという。
そんな逸話が残っている。
だから、水晶玉イベントはイベントとして割り切った方が精神衛生上いいとか。
まあ、そういうものらしい。
「あ、はい」
ボクの表情からやる気も逃げて行った。
「じゃ、次に行っても?」
測定室の隣は実技室。
定番中の定番がやってきた。
その名も、魔法をぶっぱして的に当てよう、だ。
《マジかよ》