- C 960話 人工島の貴族学校 序幕5 -
全寮制であるんだけども。
真に財力と権力のある家は、通いが許されている。
エサちゃんの家も、その“財力”と“権力”が両立している家であるから、当然、リムジンバスめいたもんで送り迎えされ、使用人20人体制の豪奢な学生生活に溺れてた。
現当主のお爺さん的には、ぶっちゃけると不満らしい。
道楽で終わることに金を賭けるのは正しくないと思っているし。
配役を金で買う行為も、フェアじゃないと思う政商。
ま、要するにだ。
ボクが巻き込まれたのが気に食わないらしい。
『お爺ちゃんだよ~』
ボクの留守電が一杯になった原因。
『うちのエリザがま~たしょうもない事しでかして済まんね~』
という謝罪から始まるショートメッセージ。
◇
寄宿学校に訪れてみて判ったのは。
学び舎としての雰囲気がないってことだ。
いや、学校らしい学校なんて、中学までだから詳しくはしらんけどもさ。
エサちゃんが、“一般学生”と“特科学生”ではカリキュラムが違うといってた意味もなんとなく。
ここは魔法使いを養成する学校だってことだ。
まあ、リアルに魔法使いってなんの事かって訝しむだろうか。
ひとつ自分の望んだ状況に即して、環境を変化させる力を指している。
他にはふたつにひとつの確率を、だ。
観測者には常に“白”として確定させる強制介入する力か。
近代魔法使いには、そんな力が求められている。
エサちゃんが魔法使いになりたいかは、この際、関係ない。
貴族風のロールプレイングを楽しんでる地で、えぐい授業が行われてるって感じかな。
「で、マルの見解は?」
喫茶店に場を移した家族会議。
十恵ちゃんの目の前には、ブラックな珈琲とモンブランが。
いつの間に注文したんで?
「学校のこと?」
「いや、エサちゃんのお友達」
ハナ姉が周囲の使用人らに聞いて回ったっぽい。
主人の令息、令嬢たちよりも使用人の方が噂話には耳聡い。
話してくれるかは如何に同情を買うかによる。
そこはボク、頑張ったと思う。
ハナ姉ひとりでは無理難題な仕事を、言いつけて。
我儘な令嬢を演じてみた。
勿論、例の学生服ではない。
「少女のロールは、伯爵令嬢。ただし、末の姫君で、人見知りがひどく。エサ子のコミュニティの中でもひとりであったことが多かったっぽい。聖女ロールの少女から随分と虐められてたとか......」
情報を集めて意外だったのは。
悪役令嬢のコミュニティにある取り巻きに対して。
嫌がらせをしてもいいっていう、ローカルルールがあったことだ。
「公式じゃない?」
「うん、公式での聖女コミュニティは4年間の中で少しづつ、立場が逆転していくものらしい。まあ、地位の向上っていうか、それこそ近代魔法使いの『目に見える世界を変革する』テーマに乗っ取っているともいえるかも」
ボクの活動は、これからだけど。
ハナ姉の集めてきた情報はこんな感じだ。
で、ボクが八ッ橋家の力で買ったロールは――