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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
ある場所、ある世界の原風景、さあ開演です
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-1.5.3話 パーティ-

 賢者は、王都の冒険者ギルドに立ち寄ってた。

 自身が魔王軍にも、王宮にも狙われているとは露知らず呑気に、いや能天気に冒険者ギルドの掲示板とそのネットワークの仕組みに驚いていた。案内人の示す仕事の紹介捌きに見惚れていると。

「何かお探しですか?」

 と、尋ねられてしまった。

 慌てた賢者は、これを利用するのは初めてだと説く。

「登録されますか?」


「メリットは何ですか?」

 逆に質問している賢者。

 いや、本当に冒険者という職業とその仕組みについて疎かった。

「そうですね、簡単に説明すると...ピラミッド形式のヒエラルキーで動いている組織です。私たちは、依頼者から仲介料を頂いて、依頼遂行可能な人員パーティを手配します。派遣業みたいな業態ですね...」

 と、賢者の理解力を試してみた。

 だが、賢者は目を輝かせてその話を聞いている。

「つまり、組織は依頼が遂行できなかったとしても、仲介料と成功報酬の一部を自分たちの利益としてハネているから損することは無いという訳だな!!」

 なんて大きな声で言うものだから、『しぃー』って案内人から怒られた。


「そんなこと、大きな声で言わないでください」

 『あれ? ダメ??』といった雰囲気の悲しそうな賢者を案内人は、優しく抱擁。

 子供っぽい性格というより、そもそも世間知らずのお子様感が滲み出ているものだから、嬉しい・悲しいといった感情の緩急が大袈裟にも起伏が激しく出ている。

「まあ、アレです! 冒険者にとってのメリットはギルドの庇護下にある関連施設の利用が可能だという事です。例えば、ギルド割引とかあるんですけどね」


「うんうん」


「死んじゃったとします...教会で蘇生を行えば、当然相応のお礼をしないとイケませんね? ね...」

 目を丸くしている賢者。

 逆にちょっと冷や汗をかく案内人。

「え? 死んじゃったら、蘇生しますよね? しませんか?」


「あ、あー、うん。する!」


「いあ、...しますよね! で、このお礼をギルドが1回分持ちます。2回目以降は分割払いで支払って貰いますが、あ? えっと大丈夫ですか?」

 賢者の目が細くなっている。

 あれ? 急に眠たくなったのって思う案内人。

「ふぇ、効いてるよ、でもなんだろうこの魔法?」


「魔法じゃないですよ~」


「あ、違うの?!」

 と、目を丸くして見開いた。

 あ、違った!って叫んでる。

「もう、面倒な話は無しですね! どんな職業ですか?」


「うん? ボク」


「そそ、あなた」


「えっと、魔法使える...回復魔法だけ、ね!」

 って、瞳をキラキラさせながら胸を張っている。

 張るほど乳房は大きくはないが、発育中の少女と思って貰える程度には案内人には通じた。

「あー、修道女見習いですか!」


「ちがう、ちがう! ボクの回復魔法は、範囲系とあと、えっと...蘇生魔法も使えるよ!」

 えっへんって、高らかに宣言している。

 いや、屋内の冒険者も案内人も一同に微笑ましい表情で『はい、はい、偉いね』と声を掛けている。

「じゃ、ヒーラーって登録しておきますね」


「本当は、エントリーシートにいろいろ書かないとダメだけど...今回はサービスで簡単なお仕事を振るから、それでいいよね?」

 すっかりお子様扱いになったが、ヒーラー不在のパーティを紹介してもらって賢者は、意気揚々と施設を後にした。

 パーティとはその外で合流した。

 パーティ構成は、即席とはいえ、レンジャー、ソーサラー、ファイターの3人が集まっていてバランスのいい組み合わせだ。あとはそれぞれがどんな技能を習得しているかに注意を払う必要がある。

 ファイターの外見はスモールシールドに、ショートソード。

 胸と腰、足に皮革のアーマーのようでやや貧弱。言って、素人いや、駆け出しか。

 これは期待できるほどの盾役は難しいと感じた。


 さて、レンジャーはと視線を飛ばすと、こちらは対照的にレベルが高そうな趣だ。

 弓は、使い込まれた複合弓コンポジットで矢筒の中に羽の色違いが数本づつ分けて入ってる。

 毒とか麻痺なんてのを使い分けるに違いない。

 いや、遠投狙撃なんてのも。

 腰の剣はファイターと同じショートソードを携え、ポーションなどの入ってそうなポーチがちょっと気になる。『大丈夫、ボクが治してあげるから』と内心ちょっとそんなことを胸に抱いてほくそ笑んでしまってた。

 傍から見ると、怖いガキにしか見えない。


 で、ソーサラーの方だが。

 こちらは賢者と同じようにローブを深々と被っているので得体が知れない。

 魔法使い同士だと、魔力感知スキルなどを体得している場合が多く、生命線である魔法量というのを推し量って打ちあう前に、優劣を競い合うものだ。

 これが魔法使いの間での常識だが、賢者から見るソーサラーは煌めきの炎みたいなのが消化後の残り火みたいに見えている。これが感知スキルの対抗手段だとしたら、恐ろしく凄腕の魔法使いになる。その逆だったら、このパーティの戦力バランスは最悪に転ずる。

 前者であって欲しいと願って、一行は馬車に乗った。


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