- C 957話 人工島の貴族学校 序幕2 -
エサ子の家は、まあ。
お小遣いに困らない裕福な家の子である。
ボクの名義じゃない家も、彼女のお爺様から拝領したようなもので。
司馬一族は、八ツ橋家に囲われている状況なのだ。
なんつうか。
ペット、みたいな?
「――っこの度は、大変、、お、おひがらも」
喫茶店に入った瞬間。
品のあるお嬢さんを捕まえて、だ。
ボクだって何口走ってんだって恥ずかしくなる口上を述べて。
ウエイトレスさんが運んでた水を、煽ってた。
緊張するよ、ボクだってね。
エサちゃんは別格。
も、もう。
兎に角、別格なの!!
◇
リアルの彼女は西洋人形みたいな雰囲気がある。
いや、そもそも本名はエリザベートと言って、アイスブルーの瞳に長いまつげ、白磁のような肌と艶のある金髪にちかい赤茶けた髪をもつ。カッパーゴールドみたいな色合いかな。
指も細くて、かまぼこ板にイチゴ大福が2個。
ぷるぷる揺れながら鎮座されている。
神々しい感じ。
ボクのお嫁さん、綺麗。
なんて見とれてたら...
「着てくれたんですね、それ」
ああ。
黒豹宅急便が無理やり郵便受けに突っ込んでいった、八ツ橋家からの贈り物。
宅配済み確認票には『お嬢様からのご厚意にいつまで群がってる、ムシども。はやく自立しろ』って書かれてて、ボクが涙目になったのは言うまでもない。
「これ? なんか男物?」
「はい。よくお似合いです。(細い指が重なり合って)マルちゃんに折り入って頼みがあるんですよ」
折り入ってなんて頼み方が久しい。
小さい頃は同じ母乳で育った仲だし。
台拭きで指を清めてたボクは。
唐突に、席を立つ。
「あら、あらあら」
「エサちゃんがそういう時は、気を付けなければならないんだ」
小遣い稼ぎだって言って、中学生のボクに誰かの身元証明なんかを、山に捨てに行かせたし。
帰省のたびに怪しい粉を国内に持ち込ませられた。
どれも嫌疑不十分でお咎めはないんだけどさ。
碌なことがない。
「それはまた...このご時世。いえ、この季節で新しい入居先って見つかるんですかね?」
卑怯だぞ!!!
真っ白で美しい手を取るニート。
頭はボサボサ、なんか沸いてそうな脂ぎった顔のハナ姉がボクの横に。
いつの間に入ってきたんだよ。
「エサ子お嬢様に、不遜な態度をとる義妹はおりません」
「でも」
「ですから、これは確認。何をすれば宜しいのでしょうか」
詳しい話は、エサ子が用意した屋敷のリムジンの中で行われた。