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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2089/2368

- C 952話 ブラックアウト、そして始まる 2 -

 城州王の下にはもう一人、鬼才が囲われてた。

 ひとりが魔女の系譜に連なる、防護服の錬金術師であれば。

 もうひとりの天才は、ハイエルフの末裔だと名乗った。

 古代魔法への造詣が深い最後の生き残り。

 まあ、そんな風に城州王には告白した。


 で、そのエルフが担当するのは。

 空間魔法による任意拡張型の隔離世界を作り上げることだ。

 現代までに発掘される遺物の中には、これと似た形式のものがあるんだけど。

 それが冒険者必須のマジックボックス。

 名称はギルドによってさまざまだけど。


 たぶん、見たことがあると思う。

 肩から提げるものや、腰のポーチまで。

 外見からではどうやっても入りそうにないものまでが、簡単に収納できるアホみたいなバッグがあるだろう。その皮革製を総称して“マジックボックス”と呼ぶのだ。

 が、それでも無限ではない。

 一応、上限があって。

 256個まで。

 使い切ったものは少ないだろうけど。


 おっと。

 そこの人、不思議がってますねえ。

 なぜ、上限が256なのか。

 こいつは容量なんですよ。

 サイズ...

 1アイテムに割かれたデーターサイズが約50キロバイト。

 効果とか解説とか、あとアイコンの絵柄などが含まれて。

 スタックされても1アイテムのサイズは同じなので、256個までしか収納できなかった。

 ポーションと金属の槍が、同じ大きさに気づいた人も居たかもなあ。


 ふん、

 ボクの皮肉を交えれば。

 ポーションどんだけ重いんだよ、て。


 さて、こんなんでも空間魔法の産物なんだけど。

 極めて一般的でとても多く出土した。

 術式が理解できても同じものが創れるかは、マイスター称号を持つ魔法使いの運次第だろう。

 が、これよりも大きなものだと。

 貴族や王族で利用される“マジック・チェスト”かな。

 こっちはリソースが赦すだけ収納することが出来る。

 ただし。

 沢山突っ込むと、何処に何を終い込んだのか分からず。

 ただのゴミが溜まるので。


 何百年も放っておくと、管理者がこっそりデフラグしちゃってたりする。

 ほら、なんか思い出してチェストの中身を探そうと思う時に限って、どこかに消えてる。

 アレが。

 デフラグされた後。




 そんな領域をハイエルフが『俺ならデキる』と豪語したところから始まった。

 そうだなあ、先ず結果を語ろうか。

 こいつヤりやがった。

 ただし、管理者の目を盗みながらの実験的なもので。

 ストレージの1割に出来る“システム領域”みたいなサイズしか確保できなかった。

 転移門から飛べば、箱庭のような小さな世界が広がってる。

「この青空は?」

 寧恬が問うた。

密度サイズの違うリアルな空ですよ。リサイズされた新しい世界が収納されていますが、影法師のような人も動物も植物も、あるけど空虚かも。そうですねえ、この世界の人々は似せた者でしかないので。生活しているようにみえて、自由に考え行動している訳ではないのです」

 寧恬は、首を傾げたけど。

 父・城州王へ振り返って指示を待つ。

「お前に移住計画の指揮を任せる」

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