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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2088/2356

- C 951話 ブラックアウト、そして始まる 1 -

 先ず、起きた結果だけを素直に伝えよう。

 ボクらは勝てなかった。

 誰にも。

 いや、何者にもだ。


 無念だ。

 今まで、何かしらの成果を収めてきた自負があって。

 今回も調査から始まって、色んな事に巻き込まれ――そして、なにも成し遂げることが出来なかった。

「くそー」

 コクーンって命名された、ナノジェルの海に浸かったまま。

 ずっと真っ暗な世界に閉じ込められてた。

 んーと、30分? あれ、60分かな。

 兎に角、ずっとだ。


 ボクは、皆がコクーンから出るよりも先に無機質な部屋を出た。

 今の姿は――。

 ウェットスーツがぴっちり身体に巻き付いた感じで。

 余計な凹凸を余計にも強調してみせてくれる。

 軽くシャワーを浴びつつ。

 湯気に雲った鏡を腕で拭って、睨んでた。

 ボクのリアルな姿。


 華奢だ。

 年齢的ならば女子高生であるんだけど。

 まったくそんな外見じゃない。

「アバターは()()()見せても、現実がこれじゃあ」

 言うて中学生みたいなミニマムさ。

 これで丸みでもあれば。

 マルちゃんではなく、チビちゃんだ。



 いや。いい。

 自虐もそこまでだ。

 ブラックアウトの原因は、接続させてたサーバーから、シグナルだけ強制ログアウトさせられた。

 丁度、リセットボタンが押される直前だった。


 これは管理者からの配慮だと思われる。

 いあ、配慮と言うか。

 ()()()が届いたのかもしれない。

『あだっ!!!』

 ハナ姉の悲鳴が聞こえた。

 真っ暗な居室の自分のコクーンに足でもぶつけたのだろう。

 悲鳴と共に、なんか壁に投げつけたような音がした。

「マルー? マル―??!」

 探してる、探してる。

 で、何かを踏んで悲鳴が上がる。

 いい加減、部屋を片付けて欲しい。


 アバターでの彼女は整理整頓が出来る、立派なお姉ちゃんである。

 姉御肌で、頼り甲斐があり、しっかりしたイメージ。

 う~ん。

 イメージなんて怖いものはないね。

 そんなのを演じて酔ってる人も。

「シャワー浴びてるぅ~」

 ボクのひとり暮らしのアパートに。

 ハナ姉が転がり込み、例の如く半分ニートで居座った。

 十恵おねえちゃんも狭い部屋なのに引っ越ししてきて、大事な稼ぎ頭なんだけど。

 あの人は未だ、寝る気だな。

『ぎゃっん!!!』

 また悲鳴だ。

 今度は何を踏んだんだよ。

 この分だと、自分の部屋から出られんな。

 そんな、ほのぼのとした日常が戻ってきたわけで――。



 暗闇の中に白く光る“点”が浮かぶ。

 復活した天使長だ。

 おいおいだけど、複数の“点”もぽつぽつと浮かびだす。

 まるで蛍ような幻想的だが。


 ここは何もなくなった虚無の空間だ。

記録容量サイズに誤差が生じています!!」

 神に告げる天使長。

 雷のような電気が奔って、天使長が燃えた。

 嬉しそうに『あっああ~』甘美で上ずった声を発してた。

 おお、変態だよ、コレ。

「パーテーションが生じてるようです」

 浮かぶ点からの報告。

 その報告を天使長が神に告げて、再び燃やされた。

「――ったく面倒な連中だねえ」

 汚女神の爪切り音が虚空に響いてた。

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