- C 950話 終末を告げるチャルメラの音 5 -
「他者を巻き込みたい破滅衝動でしたよね?」
気が付いたのがボクだけじゃない。
十恵ちゃんも鏡の向こうから挙手しながら、問うてた。
いあ、別に挙手制じゃないけど。
「ああ。最初は崇高なる自分だけの考えがあったのだろうね。其処がどう拗れたのかは最早、重要じゃなくなってるけど。自分の命でさえ軽いんだから、他人の命なんて眼中にもないんじゃないかな」
城州王じゃなくても、歴史に汚点を残した為政者なんてそんなものだろう。
勝者側に立って歴史が紡がれる。
敗者側にすれば征服王の一大事業なんて傍迷惑でしかない。
これまでの常識から、
征服王の持つ勝手な理想論が常識に塗り替わって。
異を唱えれば保護されるべき者でさえ、簡単に首が飛ぶ時代。
そうした思考のままの者も少なくはない。
ま、立派な人も中にはいるけど、さ。
そんなの一握りじゃない。
「想像するに、もっともらしい為政者ですよね」
モルゴースの脇から、グィネヴィアが顔を覗かせる。
工房の奥にある食糧庫で、しゅわしゅわ製造に加担し、これの試作が完成したようで。
ハナ姉とすでにデキ上がって立ち寄ったところだ。
流石、誰が呼んだか宴会部長!!
「いあ、それでこそ討ち果たし甲斐のある悪代官!!」
絡んできたハナ姉。
いや、討ち果たすはいいよ。
それをどうするかだ。
相手は...
「城州王サイドは特殊な爆弾を使ってるんだろ?」
巻き込まれたら――魔法城壁で何処まで防げるか未知数だし、それはボクたちが事前に準備が出来ている場所でしか意味を成さない。ノーマークな都市は以前として無防備なのだ。
「全部を護るのは不可能だろ?」
キルダさんは切り捨てる計算をした。
ボクたちもするべきだけど。
「いや、すでに各地で何十万もの犠牲者が出ている!!」
キルダさんからのダメ押し。
待ってもくれやしない。
◇
各地――スカイトバーク王国は、当初、三辺境公の独立国(計画)案に前向きだった。
それと同時に、旧王朝の忘れ形見も引っ張り出して。
南洋王国の正統継承問題の蒸し返しを宣伝したのだ。
これに反発するような形で。
新王朝の守護者って宣伝してるテロリスト“真竜教”が、各地で犯行声明を宣ってた。
言い分としては掻い摘むと『覇王に栄光あれ』って賛美してる。
掴んでいる情報の洗い出しから。
「遠隔操作が困難であると仮定した場合、火種は持ち込みで着火・爆破の連動に、狂信者が使われてるんでは? 考えたくもないけど...他人の命は軽いんですよね、あの集団は」
酔ったハナ姉の胸の開け具合がエロ過ぎる。
な、なんです...そ、そのぼ、ボタンの掛け違いは。
ちょ、ぎゅーぎゅーなのが。
あああ!!
もう。
鼻血が出る。