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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2081/2367

- C 944話 賢者と魔女の末裔 4 -

 防護服の学士は、工房に運び込まれた人形ゴーレムと対面する。

 ダービーの街に対し、武力行使で挑んだ命知らずどもだって話で始まり。

 戦死してたって言うんで病院に担ぎ込まれたら、検死官たちが放り投げてたものが回りまわって学士の下に届いたのである。で、防護服の学士は解剖の為にメスを取り出し、そっと人形の腹を掻っ捌いたところだ。

 驚きのあまりに、悲鳴が出た。

 己の興奮した呼吸でバイザーが曇って仕方がない。

 それだけのお宝がソコに詰まってた。


 ボクの作品を素直に喜んでくれるのは有難いけど。

 腹を十字に割かないで欲しいなあ。

 あとで縫い合わせる時に中身が零れ落ちそうになる気がするんだよ。



 広い工房から続々と他の錬金術師たちが集まってくる。

 独り占めしている余裕はなく。

 兎に角。

 腹の中にある臓器のようなモノを2本の腕でかき出していた。

 ちょっと人手が欲しくなったところで。

「おい、新人ども()()を持っていてくれ!!」

 たらいを手隙の学士に持たせると、

 引きずり出した長いチューブを放り込んでいく。

 人形のように見えて、まるでヒト種族のようなゴーレムは錬金術師たちの胸が躍った。

『これはどんな人が創ったんだろう』

 ってな具合に。

 ダービーの小競り合いは、現在進行形だという。

 一時は、市庁舎の近くにまで侵攻を赦したようだけども。

 城州王の国軍が投入されると形勢は逆転。

 市庁舎からずるずると、侵攻された門の望楼付近まで押し返すことが出来たという。

 ただし、その反転攻勢に至るまでに屍の数が夥しいことになった、とか。




 ――とか。

 なんて他人事の話じゃないな。

 ボクたちが遠隔で操作していることなので、こちらが当事者だってこと。

「そろそろ周波数を替えよう」

 いつの間にか、モルゴースさんが中隊長で。

 ボクらは彼女に従うヒラ隊員になってて。

 ボクなんて一等兵とか呼ばれてて。

 で、操作する兵士の数は誰よりも多いと来る。


 理不尽だと言ったら。

 モルゴースさんにお腹を吸われた――「マルのお腹から、おひさまみたいな匂いがする」――いや、それは洗濯した服の匂いで、ボクのじゃない。ボク、日向ぼっこすると仰向けに寝ちゃうもん。

「じゃ、マルは迫撃砲を用意。モルドレッドとガウェインは、旗振りの指揮官を狙撃して。出来なきゃ、いや、ヴィヴィアンとグィネヴィアがカービンで弾幕を張るから、その都度気になったヘルメットでも撃ち抜いてやりなさい」

 えげつねえ。

 歩兵携行武器の中でもっとも重火力な迫撃砲は、60ミリの約3キログラム超の砲弾重量があるタイプがチョイスされてた。これらは聖櫃の3Dプリンターでごーりごり削りだして作られたものだけども、ちょっと、この時代にはオーパーツ気味なとこがある。

 なんたって。

 飛翔距離は3千メートルをゆうに超えてしまう。

 流石に街の向こう側には飛んで行ったりはしないけど。

 風を切ってひゅるるる鳴きながら。

 回転しつつ落下してくる砲弾を眺めてるような連中だ。



 気の毒に思っても。





 防護服の学士の手の中にずっしりと重い球体がある。

 ゴーレムの核として使っている“魂魄”だ。

 その中には複雑な術式を刻んだはこと宝珠が入っている。

 先にも述べたけど。

 他の自立起動型のゴーレムにも同じものがあるけど。

 今回のはドローンとして運用が出来るようにつとめた工夫が生きて居る。

「この魔紋が遠隔か...」

 曇るバイザー越しに、興奮がおさまらない。

 これを肴にメシでも食える勢いだった。

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