- C 942話 賢者と魔女の末裔 2 -
「話はあとにしましょう」
積み荷は少ないけど。
人数は多い。
王直轄領とダービーの港町は、領主のあたりで問答があって。
寧恬たちの手が及んでいない。
ただ、いつまでも安全と言う話でもない。
今は未だ手が伸びてないだけ。
「こちらで用意できた守備兵は1個中隊までになります、申し訳ありません」
百舌鳥に謝られた。
ラミアさんが謝辞を述べるよりも先にだ。
実のところ、もう少し兵力が欲しかったが。
ボクにも限界くらいはある。
用意できる兵力が。
ではなく、操作できる人数にだ。
いくらかの補助が入って、同時起動で百人ちょい。
「いや、歩兵の中隊規模なのでしょ? 十分じゃないですか」
リリィがラミアの背を押して。
ユウキが妹たちの歩を急かす役目。
いいコンビだ。
「して、港はどこから」
百舌鳥は首を横に振って、
「港は使えません、ですので海岸線を」
街から出る。
出してはくれそうにないけど、そこはこの兵力で押し切ろうって話。
案じてくれるは404のみなさん。
うんうん、いい人たちだ。
三公の動向と、城州王らの動きを調べてくれた隣人で。
雇った者として本当に頭の痛い事。
「まさか、死兵ですか?」
百舌鳥がユウキを突き放す。
「あなた方は行かれよ。気にするものでもない、この場は甲蛾衆いや、......手柄を横取りするのは憚れますな。帝国の魔女が師、灰外套の賢者殿が引き受けてくださる!!」
ボクの目となり、耳となる兵のひとりが軽く首を垂れた。
なんかそうした方がいいよ、と。
傍らに立ったモルゴースさんに言われたんだよね。
“おじぎだけでもマシになる”
だって。
いや、アドバイスのとおりに部屋の空気がマシになった気がする。
なるほどねえ。
◇
閉ざされてた城門は、甲蛾衆の手でこじ開けた。
彼らの支援もここまでで。
アリスさんらも脱出したそうだ。
郊外に出て羽ばたく音を耳にした気がする。
「あの羽ばたきは」
ボクの頭からヘッドセットを横取りした、モルゴースさん。
片耳だけに当てて目を閉じた――「怪鳥ゴーレムかい? いや、しかも恐ろしく機動音が小さい」
もともとゴーレムたちの起動音は最小にして組んであるけど、特殊な環境で使いたいって要望には特に隠密性の効果が高い魔術式が組み込んである。こいつはもう一級品扱いでね、そうそう何機も量産が出来ないとこが難点で。
おっと。
モルゴースさんがボクの胸ぐら掴んで――
吸ってきた。
またですかあ。
「おっと、私としたことが。マルちゃん引き寄せたら可愛かったんで、つい」
そんな理由?!
「怪鳥も、マルちゃんのかい?」
「(深く考えないで)ま、まあ」
甲蛾衆の人々を“コウテイ・マンタ”まで送り届けたのだろう。
運用されている個体の起動音を聞くのは初めてだったから。
おっと、スピーカーから声が。
「賢者殿、火力支援をお願いします」