- C 938話 光の天使長 3 -
「あーもう、日課だったデイリークエスト熟してくれるって話、いつか前に...したよね?!!」
咳込みながら、汚女神は怒鳴り散らしている。
茶色がかった黒っぽい何かが、ぴょんぴょん跳ねるジェスチャー。
表情は無いけど、語気で怒ってると分かる。
「土くれにしてくれた子も、数は戻ってるよね?」
「は、はい」
声が震えた天使。
いや、上位天使でさえ神は絶対だって理解している。
その作られたボディが、魂に囁いてくるから。
「じゃあ、さ。光の天使長のッ!! あのバカは何処行ったんかな?!」
髪の毛の内側では、握った拳がプルプル震えてるとこだろう。
小さな膨らみの真上でぷるぷると。
◇
光の天使長――熾天使の中でも最高位であり、3対6翼の有翼人。
見る者には車輪のようにくるくると回っているように見えたり。
或いは3面の顔を持つ者だったり。
他には単に光り輝く玉のようだったりと...。
目撃された地域によって、その姿は様々のようだ。
でも、どれもが彼を指すもので。
神そのものに例えられる。
ボクらも、その人影を肉眼ではない魔術的なフィルターに通してようやく。
共通の認識で情報共有できていた。
「「「「「「天使だ!!」」」」」」
モルドレッド卿に諭されて、ハナ姉も疑似窓から月光を背にした人影の目撃者。
およそ城州王らも同じ光景を目にしている事だろう。
しばらく天使が存在してたんだけど。
不意に圧力めいたプレッシャーが消えた感じがした。
と、同時に月光に米粒みたいな点もなくなってて。
「何だったんだろう?」
ハナ姉から、そんな当たり前な疑問がこぼれてた。
モルゴースさんの手は未だ、ボクの肩に乗ってる。
「なあ」
「理解できないからこその生物と言えませんか?」
恐らくは敵情視察か何かだろう。
そういう発想しか出来ないのは、ボクらに情報がないから。
でも。
天使たちはこの世界は救いようがないと諦めたんだ。
そこに神の介入があるのかは謎のままで。
さて、神だと名乗ったバカ野郎どもは多くいたけど。
リセットボタンを押せる神さまは初めてな気がする。
この手合いは殴れるんかなあ。
「マル、今、とんでもないこと思ってないよな?」
「そうでもないですけど」
はぐらかしてみる。
まあ、思うだけなら自由だろう。
ハナ姉の方は『天使って殴れるかな?』と早々に物騒なことを口に出してるんだけど。
この人なら、やりそうで怖い。