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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2073/2356

- C 936話 光の天使長 1 -

 この世界にも、救済は無い。

 そんな一文だけが刻まれた太古の壁画が――。

 聖櫃騎士団の宝物ほうもつ庫にて厳重保管されている。

 アクリルのケースに、保存した当時の空気も一緒に。

 なんとも...


 っ、すー...なんとも...


 いああ。

 なんて言ったらいいんだろうなあ。

 確かに“神”のような者を肌で感じなければ、救済は無いと結論下しちゃってもいいんだろうけども。

 それは、ソレ。




 一般公開してくれた、魔術師ガンドさんには悪いけど。

 だからどうした?的な感情しか湧かないのは。

「心が渇ききっている!!!」

 魔術師さんに叫ばれた。

 いあ、なんか本当にごめんなさい。

「いや、謝る必要はない」

 グィネヴィアさんは壁画を見て開口一番で“なんだ、この汚ねえ土くれは”なんて呟いてた。

 モルゴースさんはマジマジと見て。

「こんなん蒐集してたっけ?」

 ケースに入れて後生大事に崇めてた連中との温度差。

 メルリヌスも総長って立場も放棄して、姐さんたちの機嫌を取り始め。

 大いに亀裂が入る。



「ま、正直ね。天使の連中のちょっかいが一番余計なことだと思うわけよ」

 とうとう宴会部長グィネヴィアに酒が入った。

 彼女にすれば大事な()()()だという。

 うーん、ドワーフ的発想?

「自分らのことは棚に上げてか」

 キルダ・オリジナルさんも参戦して。

 彼女は実はもっとも大事なことを告げる為にクイーンズランド王国・後宮へ出向した。

 が、下というか。


 ボクの工房で宴会が開かれてたから立ち寄ったという。

 もう、たまり場じゃんかよ。

「ふぐぅ、棚、棚か...まあ、確かにこっちも、まさかそうなっちゃうの?! なんて流れになっていつも地雷踏んでる気分だよ。ゲームマスターの意図よりも、ストーリーテラーたち語り部か、進行役と交通事故になることが多くてね。なんか端から殴り折ってたら、不審者として追われるようになったんだよな」

 そりゃそうだ。

 勇者に選ばれたって教会で、いあ、今は村か王宮かで告げられるシナリオに干渉して。

 聖櫃の連中は早速、魔王城に乗り込んでレベルMAXの暴力チート振りかざして、中盤の盛り上がりをへし折って歩いている。

 ソロプレイの世界なら、未だ、いい。

 良くないけど、たぶん誰にも迷惑が掛からないけど。

 オープンワールドの多人数参加型で、横から獲物を掻っ攫うのはマナー違反である。

 魔王城がもぬけの殻になったからって理由で、別の()()()を置き土産にする悪質さ。

 不審者どころか災害級の鼻つまみ者である。

 で、自覚がない。

「不審者じゃない、破壊者だ!!」


「デストロイヤー、かっけえー」

 反応したのは魔術師。

 ほら、アーサー卿やガウェイン卿が引いてるよ。

 どうもネジが飛んでるのは、魔術師さんのようだ。


 工房の換気をしにボクは席を立ち。

 地下深いのに空間魔法で作った疑似窓から“月夜”を見る。

 地表の天空も、この窓から見る風景と寸分違わないものだ。

「ふむ、月夜か」

 酔い覚ましだと言って、モルゴースさんがボクの背に。

 肩に両手を突いて。

「――聖櫃の成り立ちは、はじめの第一歩と同じ地点からなんだよ。約2万人のテスターが緑豊かな惑星ほしに降り立ち、それぞれが演じてみたい種族として等身大の世界を満喫する。その時に私たち“アヴァロン”が結成され、もっと自由にもっと思い通りに行動したいと、願った連中が...ストーリーに関係なく動いた」


「その結果が、スジ折りですか?」

 照れた様子でボクの背に顔を埋めてきた。

 なんか吸われてる気もするけど。

「んー。ん?」

 ボクのつむじ上で鼻息が止まる。

 はて、と。

 ボクも疑似空間の窓を見た。

 換気のファンは工房から少し離れたところにあって、新鮮な空気の交換中にある。


 さて?

「あれは...」

 月の光が通らない影が見える。

 人影にしちゃあ、高い位置にあるようで。

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