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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2072/2364

- C 935話 祈る相手は、 5 -

 城州王の下に例の怪しい防護服の錬金術士が傍にある。

 忠誠心なんてものは欠片もなく、ただ只管に狂気の実験が出来るなら。

 パトロンなんてのは、悪魔でも人でなくてもいい。

 そんな希薄なひと代表。


 まあ、この錬金術士の素性を少し紐解くとすれば...。

 帝国の魔女に列する傍流の血統者。

 先祖返りでもした、そんな感じだろうか。

 とは、当のフィズは否定するだろうなあ。

 だってあの子。

 錬金術は戦争ではなく、世界にある種族を豊かにする技術だと思ってたから。

 子孫こどもたちが躍起になって兵器化してると分かったら、泣くな。

 あれなら。



 城州王サイドでは精霊炉マナリアクターの小型化には到達できなかった。

 参考文献の悉くが、魔女の手記を基にしているからだ。

 あれは日記で、無駄が多い。

 いや、あの子にしてみれば。

 古代魔法紋を利用しないで、魔法陣だけで完結できるよう仕向けているまでは、天才的といえる。

 しかも、魔法陣を面ではなく立体的に捉える発想なんて。

 普通は考えないものだ。


 あ...、


 いや。

 多元展開法陣による魔法のぶっぱ実験はした事があったな。

 あれからの着想か。

「小型精霊炉ではない、と?」

 スカイトバーク王国の街消滅事件――飛行禁止区域からの航空写真を王の執務室で鑑賞している。

 この映像はライブである。

 つまり静止画に見えて動画だというわけだ。

 現場上空に“遠見の鏡”を持ち込んだ。

「はい、厳密にはですね」

 淡々とまた、堂々としている。

 何時ものようにくぐもった声は、防護服だからだけど。

 その防護服は胸を張って応じてた。


 見慣れた光景だ。

 地下の工房から地上階の王の居室まで。

 変人が素通りできる城内。




 ま。

 非常事態戒厳令下だ。

 国外のスパイとその協力者らしい者は投獄され続けてるし、怪しい学士ひとりに怯える必要はない。

 悪魔と取引をしたのはどちらか。

「結論から言いますと、魔女の理論は無駄が多いんです。触媒でご機嫌を取り、留める為に細心の注意と、過重労働させないためのストッパーが幾重にも張り巡らされ、至れり尽くせりの休憩時間...これは、機械のクールダウンタイムかと思わされてましたが。違ったんです! 精霊に睡眠時間まで与えてたッ!!! ナンセンスだ、非常に意味がない。アレはエネルギーです、純粋なパワーの塊なのです。燃料の癖に与えるものが多すぎる!!!!!」

 興奮しすぎ。

 卓上を叩くような暴挙に出てないけど、くしゃくしゃ鳴る防護服の腕は。

 ぶんぶん上下に振ってて。

 なんか液体でも飛んできそうな勢いがあった。

「なんです?」

 嫌悪がの視線に気が付く学士。

 視線には敏感なのだ。


「いや、液体が」


「飛びませんよ、清掃用の服と、普段着は切り替えてます。この執務室には特別な()()()()で来てるんです、高いんですからね」

 と。

 いやいや。

 皆の胸中を過った言葉は――『なら、防護服以外のを仕立てろ!』だ。

「服のセンスをとやかく言われる筋合いは」


「話が進まんと、言っただろ? 余計なことで学士の時間を盗らせるな。で、精霊炉の無駄さは熱弁で理解したが。要するに何をした、具体的には何を触媒にしたのだ??」

 理解力があって助かる。

 学士の微笑みが城州王にも伝わってる。

 その傍らに立つ息子にもだ。

 どうも、似たものであるようで。

「わたし、()を使わせて貰いました!!」

 満面の笑みだった。

 これ、怖いやつだ。

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