- C 933話 祈る相手は、 3 -
「ちょっと待て!」
モルゴースさんも、床に手を突いて前のめりに。
「何だ?! その近況報告みたいな!!!」
そう正に近況報告だ。
FPSゲーは苦手だけど、TPSモードが使えるパッチが当てられたので。
最近は、ソイツと頻繁にチームを組んでいる。
いあ、あと。
同年代のアレと、ソレとも組んでるから。
「うん、4人で予選会に出場したよ! とりま...ギリ通過したから。次の選抜は7日後だわ」
近況報告しちゃう、バカ。
ボクのバカ、バカ、バカ...
ほら、みんなの目がマジ怖い。
「――いや、ほら。ええっと、世界の命運はさ。城州王らの自暴自棄を止めさえすれば...ね。えっと見えないし分からないけど、カウントダウンは消え、いやあ止まると思うんだよ。やだなあ、怖いよみんなの目がマジ怖い。あ、ダメだって...そこは~」
吸われた。
ハイエナのように柔らかいところから、ヤル。
ああ、またひとつ。
お嫁さんに行けない事が増えたような気がする。
◆
天界サイドでも少し日常ではないことが、あった。
工房に籠ってた髪の毛のお化けみたいになった、汚女神の顕現。
おしっこ程度でも工房を出ることが無かったが。
彼女が、そうだねえ。
実に2千年ぶりに天界に戻った感じだ。
「うっわ、歩きにくい」
第一声も、自身の形に対する愚痴。
これは、キツイ匂いを発してるだろう。
天界の自浄機能のひとつ。
強力消臭システム。
巨大な換気扇が回って、天界はいつもフローラルに保たれる。
「換気扇が動いてるのに近寄りがたき、凄まじさ」
天使たちが遠巻きに、汚女神を見てる。
視線が合わないようにも務め。
ちょっと苦しそう。
天使の情況を見て、いや見えないなあの毛むくじゃら。
ふと、立ち止まり。
肩で息を整えてる。
執務室から工房までの道のりは、60~70歩余り。
普通の感覚だと、歩いてすぐ。
汚女神の体力からすると。
10歩で『いい運動したなあ』だ。
純白だった上下のジャージも黄ばんでるし。
スリッパも履かずに裸足で歩いてるんだけど、廊下に変なキノコが生えてる。
最早、穢れ神みたいな。
下級天使の群れたちが現れると、
「しつこい汚れも! 私たちで処理しますー」
って歌声が。
健気だ。
もっと感謝しろ、汚女神がっ。
汚女神は周囲を見渡してる。
何かを探してるんだけど。
この動きが、ゾンビ。
猫背は...神じゃない髪が重たくて、満足に動けないから。
ストレートでもなかったけど、巻き髪みたいな癖毛でもなかった。
それでも髪束で、姿が隠れるような毛むくじゃらになると。
そうもいかなくなる。
「右席は、右席は何処か?」
最側近の天使を探す。
あ、そいつ、
“ちたまパックリ”事件の再来すっぞって、宣言したヤツだ。