- C 932話 祈る相手は、 2 -
旧時代と近代の間には、約5千年の時間が横たわる。
世界滅亡から、再生と創生の神代期ってのが3千年――“ちたま再生”記っていう古文書がある。
羊皮紙のような獣の皮で書かれた古代文字。
難読不能なオーパーツだけど。
近年、日記じゃないかって話。
生き残った(ナーロッパ系)神さまの日記。
神代はひとりの乙女誕生後、開拓権は亜人種族へとバトンが渡る。
これが近代まで続く人々の歴史だ。
丁度、2千年と少しに至る。
あ、ああ。
神代を終わらせたのは、竜を従属せてた幼女と。
世界を灼いた魔女、そのふたりから“お姉ちゃん”と呼ばれてた少女の3人だった。
にゃあにゃあ聞こえてきそうな、百合の香り
なんてこった、女神だらけじゃないか。
◇
そうだ、そうだ。
この“竜を御した”乙女神の神話だが、ちょこちょこっと改竄の余地が見て取れる。
天界に居座る事になった女神からの悪知恵に由るもんだが。
ボクの知り合いに由れば、だ。
ことの流れはこんな、感じになるそうだ――
旧時代文明は正に、神々との決別・終末戦争なのだそうな。
第1次AI独立戦争とでもいうか。
箱庭観察してたら、観察者に楯突くのが現れた。
無視してればいいのにレベルを落として噛みついた、研究者が現れる。
アホだ。
ま、そこら辺の醜い争いは無視してやろう。
色々だよ、なんやかんやあって収拾のつかない事態にまで事が及ぶ。
箱庭の住人達に、だ。
その世界は観察されてると、知られた訳だし。
気まずくなった。
そこでフィルターが設けられたのが『天界』と『魔界』だ。
もっとも、観察者が地上散策の息抜きをする為に作った『魔界』はわりと早い段階で生まれてた。
悪魔の囁きだけはAIも感じてたわけで。
例の“ちたまパックリ”事件が起こる。
AIが起こしたのではなく、大人げない連中、つまりは神と信奉されてた観察者たち。
サルとはあいつらのこと差す。
管理者権限の一部を、AIの中から純粋な少女に委託することにした。
先ず流れとしては、まあ。
こんなとこだろうか。
物語性は。
清く正しい魂を持つ少女が御言葉によって選抜され。
神々の祝福を受け、全知全能神の娘として生まれ直すってストーリーがとられた。
まあ、後出しじゃんけんみたいな手法だからな。
これでも、ボクの知人はオブラートに包んだもんだって言ってる。
第3稿までの表現は露骨されて、赤字修正されまくったという。
そんなに添削されたら、ボクは萎えてシーツを恥ずかしいシミで濡らすと思うわ。
耐えられない。
いや、そんな軟なプロジェクトじゃない。
リアルマネーが動いてるから。
嫌らしいけど、これが現実なのよね。
「――で、魔王があるんだから神さまが居るでOKなんだよね?」
ハナ姉は、もう。
ここまでの語りがすべて、今! あなたのその質問。
いや確認で台無しです。
「あ、うん。居るよ、結構な怠け者で“工房”に籠って、ゲームしてるっぽい。他の世界の神々とFPSゲーに興じてるって話、もう少し神さまっぽいことしてれば、可愛げもあるのにね」
聴講者らが、小首を傾げてた。
えっと、な、なに?