表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2067/2356

- C 930話 水上器の運用事情 特潜編 -

 潜水艦が開発されたのは、帝国の魔女が書き記した――よく分からない風呂桶みたいな変な物に由る。

 風呂桶というよりも棺桶?

 いやもっと悪く言うと、ワイン樽みたいな形状からパドルが生えてて。

 ストローみたいな管が伸びた形状の。


 ただの悪戯書きである。

 これを後世の人間たちは、真剣に考えちゃったんだ。

 残念ながら、フィズには絵心が無かった。


 そりゃ、潜水艦くらいは何となくわかってる。

 ただ。

 この日記帳を書いてた時は非常に強力な眠気に誘われてて。

 なんとなく...たぶん、こんな感じじゃなかったかなあーってノリで。

 丸い何かと大きく伸びたパドルが生えた。

 よく分かんないものを書いてた。



 フィズとなって王室の特権で取り寄せた。

 拉麺・ローデシアの御業を使って盗撮してきた、落書きを見て「ナニコレ?!」と自身の落書きを悪辣に罵ったというから、ブーメランもいいところだと思う。

 さて、ナーロッパ界隈で初の実戦的な潜水艦実験が成功したのは、北欧諸部族連合・北グラスノザルツ侯国って事になってる。かつての帝国皇帝を輩出したというラインベルク家は、ハイエルフたちの棲み処に引っ込んで数世紀、表向きは隠遁生活を謳歌しているようだけど。

 ある賢者によれば、だ。

 かつての権勢を取り戻そうとしているとも言われている。

 その証左として、神出鬼没の軍艦――多砲塔潜水艦の存在が指摘された。


 この辺りは偶然みたいなところがある。

 同国の性質は、陸軍国家だ。

 一年の数か月しか海は氷から解放されないので、仮に各国の一般的な軍艦を建造したとしても。

 分厚い氷に進路を妨げられて航海に出ることは叶わない。

 運よく幾度かの訓練航海が可能になったとしても、軍艦の耐久年数はかなり短くなると考えられる。


 要するに向いていないのだ。


 そこで本気で研究されたのが、多砲塔潜水艦だ。

 当初の目的はフリゲート程度の規模で、沿岸警備が出来るほどの火力さえあればよし。

 贅沢な望みも期待も無かった。


 が。

「ケーニヒスベルク伯領からいいもんが出土した!!」

 伯爵領は侯国に帰属している。

 マーガレットことフィズの子孫たちが相当な努力と、外交を駆使して発展させ。

 彼女が成し遂げられなかった。

 自治権に匹敵する辺境制を勝ち取っていた。

 その伯爵領から、出土した文献――隠者マオは舟形模型と共に、イザベラの執務室に滑り込んできた。

 出土品の状態もよくて、設計図も掲載されたものであるよう。

「この国の海軍力増強の切り札になる!!」

 潜水艦の研究は各地で行われて1世紀ちかい。

 それでも実用的には程遠く。

 なにか切っ掛けでもあれば...


◆◇◇◆


 幸い、侯国の工業レベルはドワーフとコボルト族たちによって支えられていた。

 デミ・ミノタウロ族は力自慢の工夫たち。

 民間の工廠で働いているんだけど。

 そんな巨躯を持つ工夫長と、イザベラが対峙するシーン。

 確かにデミとは言えミノタウロスが小柄になったとしても、2、3メートルの巨躯。

 専用の椅子に座ってくれても、頭数個分の上から覗かれると肝を冷やすもんだけど。

 イザベラは堂々と。

「ウイッチの子らに海を見せてやりたい」

 なんて突拍子もないことを切り出す。

 氷上を木馬で走りながら離陸すれば、空の上から白波が起つ荒々しい海が見える。

 イザベラの言葉はちょっと理解されなかった。

「いや、そういう海じゃない。そうだなあ、こう別の表情の海だ。例えば想像でもいい、熱い日差しが照り返すキラキラと輝く海だ。防寒着を毎シーズン重ね着させられて、手足の感覚がなくなるような過酷な空の上じゃなくて、暖かで風が気持ちのいい世界を」

 それが体感できる軍艦の模型が、卓上の真ん中にある。

 ドワーフの親方たちも感心した遺物で。

 コボルトは細工が施された“隠し”を見つけた後は、目が輝いたままになった。

「それが、これか」

 手に取ってみてから驚いた。

「これはなんだ?!」


「潜水艦っていう」


「いや、何処から出たんだ!!!!」

 ふふって鼻が鳴る。

 得意げにイザベラが笑って「300年前の魔女工房跡地」という。

 いや、正確に言うと。





 そいつは、ボク。

 マル・コメの工房跡地だ。

 ソードフィッシュ型ゴーレム多砲塔潜水艦、なんてものでも創りたかったんだろうと思う。

 出ちゃうんだねえ、そういうの。

 まさかね、それが原形で水上器母艦に成るとは、思わなかったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ