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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2065/2356

- C 928話 水上器の運用事情 航戦編 -

 着水技術が本格始動すると。

 各国における制空戦術や海防論めいた学術的なアプローチから、ウイッチたちの環境が整備されていく。今まではただ飛べばいいという暴論から、如何に面において空間を掌握できるか?っていう考え方に変化していった。

 これによって。

 空戦魔法士たちの階級的な特異性だけでなく。

 艦隊戦術・戦略レベルからもエリート意識が生まれていくようになる。

 いやそう仕向けられていく。


 お前たちは特別な存在だって。

 先ずは食事から目に見える範囲で特別扱いが始まって――おやつに、プリン1つが追加された。



 偵察機動打撃群。

 水上器航空部隊における最大の戦闘単位である。

 水上器母艦4隻と、水上器艦載型重巡洋艦6隻を中心とする艦隊スタイル。

 総勢1000人を超える魔法少女・少年たち。


 ここに、戦艦やら駆逐艦なども随行するので。

 形容すれば“()()()”である。


 戦術機動群。

 打撃群ほどではないけど、参加魔法士の数は半分程度の600人。

 水上器母艦2隻ないし、航空巡洋艦のみ数隻で編成されるスタイルといえる。

 国力によっては、このレベルで最大となる場合もあって。

 練度の差異如何でなら、量を質で覆すことも可能だ。

 それが魔法使いなのだから。





◆◇◆◇◆


 魔法士たちが制空権の重要性と、制圧力の強度によっては巨砲をも圧倒することが1世紀も前から実証済みな世界では、大艦巨砲主義は定着しなかった。が、しかし...大艦主義は水上器の運用上で構想だけに留まってた。

 フランク王国がモニター艦と称して、近代改修前のド級戦艦の後部乾舷上部に平甲板の設置。

 これが構想を構想だけに終わらせなかった訳だ。



 モニター艦に選出されたのは第2レートのド級戦艦“ラ・クローヌ”級。

 水線長165メートルの長船首楼型船体で、艦首形状は垂直に切り立っていた。

 艦の上部構造は、装甲司令塔と煙突と単棒檣の前後マストと砲塔以外はない、簡潔でいて重厚な外観となっていた。

 艦首甲板上に1番・2番主砲塔を背負い式に2基、2番主砲塔の基部から上部構造物が開始し、測距儀を載せた装甲司令塔を組み込んだ操舵艦橋の両脇にはブリッジが1番煙突と2番煙突と接続されていた。船体中央部に単脚式の前部マストが立ち、両舷側から単装砲のケースメイト式が7基配置されていた。3番煙突の背後には艦載艇が並べられ、それらは3番煙突の側面に設けられたクレーンが片舷1基ずつ計2基で運用されていた。上部構造物の末端部に後部艦橋に組込まれた後部マストが立ち、その背後に3番・4番主砲塔を背負い式で2基配置していた。

 これが在りし日の“ラ・クローヌ”級戦艦の全容で。

 試験運用となる頃には、3番煙突以後の後部甲板が平甲板へと造り変えられていた。

 300ミリを超える主砲が2基も降ろされ、巨大な格納庫と物資・乗務員室・病院施設などが設置されていた。運用上、病院船としても活用できる点は実験終了後の再利用まで、考えられていたのかもしれない。

「おっととと、こんなに揺れる戦艦ふねだったけかな」

 蒼灰色の髪を短髪に揃えた、少女が飛行甲板に降り立つ。

 “木馬”には引き込み式の三輪車があって、短い平甲板にはワイヤーをフックで引っかけて着艦。

 はじめて乗船した時はもっと大きく見えたものだけど。

「こんなに、いや」


「いああ、大きくなったな」

 出迎えてくれたのはラ・クローヌの艦長。

 少々、やつれて見えるのは歳と、海の風のせいだろう。

 ビスケー湾の海風は厳しいから。

「お久しぶりです、艦長」

 少女と初老のふたりが固く握手を交わす。

 艦長が大きくなったと形容するように、少女の身長は160センチを少し超えているし。

 ややふっくらと丸みを帯びている。

 もうすっかり大人の女性にも、見えるだろう。

「本日付で、訓練艦ラ・クローヌに乗艦します...以下、100名であります」

 少女の後から続々と、魔法少女たちが着艦してくる。

 ま、中には着地失敗で安全ネットに絡まってる子も、少なくはないようで。

 引率してた蒼灰色の少女が、明後日の方に視線を泳がせてた。



「ふふ、元気があって何よりだ! ここでは邪魔になるだろう。艦橋なかで積もる話でも」

 すっかりじぃじと孫にでも戻ったように、諭されて。

 ふたりは手をすり合わせ、白い暖かな息でも吐きながら。

 艦の中へ消えていった。

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