- C 921話 羨む者たち 1 -
スカイトバーク王国が三公の独立に前向きな姿勢だという話題が、台州に流れる。
欧州列強の一つに数えられ、その権威と武威によってインド洋付近でも、その名が轟いている。
轟いてるけども、残念ながらそこそこの大都市じゃなければ、その名を聞くことも滅多にない。
「影が薄いとは思ってたけど、ここまで?」
西大陸の404が経営する娼館に戻った連中は、客分として元ホテルの上階を貸し切っている。
「ルームサービスで呼び出すの、やめてくださいます?」
書類仕事が溜まっているとラミアさんは、はっきりとお付き合いを断った。
ローデシア(偽名)はおいおいと泣き崩れ。
しばしチラチラと慰めてと言わんばかりの圧を与えてくる。
「うっわ、めんどくせえ」
「そういうなよ~今なら、どっちでも子を産めると思うんだ。な、なんなら排卵日が近い感じがするボクでもいいぞ!? ラミアとの子ならきっと可愛い魔女になるだろうなあ」
勝手に家族計画を妄想し始める。
「魔女が可愛い?! 御冗談を!!」
「いや、可愛いよボクたちの子供だし。女の子なら問答無用で魔女確定だけど。男なら...いや、可愛いゴスロリコーデで羞恥心を破壊して、性別をトランスさせれば男の娘に出来るかもだし。そしたら魔女でもOKじゃないかな?」
魔女一択しか、ねえじゃねか。
しかも男の子が誕生したら人格破壊って酷くないか。
マジ、親に成っちゃいけない人だ。
「こ、この人でなし!!」
「いやあ、それ誉め言葉だよね、嬉しいなあ」
褒めてねえよ。
◇
スカイトバーク王国の三公に対する協力或いは支援は、外圧からとなる。
南洋王国に対する、統治者としての正統性の有無といったところか。
訴えの反証として――欧州総領事館より、西大陸売買契約書が提示されている。
所有者が旧王朝から、城州王の手にあるという事実。
ナーロッパ評議会。
薄暗い室内で円卓を囲んだ権力ある国家元首たちが集う、非公式会議。
そこにスカイトバーク王もある。
カネは出さないのに意見だけ出す、国王という名物王で。
この強気姿勢と、格の違いは防諜機関・ぴんく☆ぱんさーがあるからという。
「苦労して探し出した、あの青二才でもかつては王族だ。ま、見つけた時には威厳の欠片、いや輝きすらも失った見事に縁の掛けた器のような、ガラクタであった」
スカイトバーク王は、失望の念が隠せない。
原住民から金貨400枚で売られた王族である。
「高い買い物だったのか、安かったのか」
「珍しいな、国王が弱気とは?」
議長国・グラスノザルツ連邦共和国首相。
丸縁の眼鏡をはずして、専用ナプキンで拭ってた。
「西大陸のアレ、反故に出来ぬか?」
表がダメなら裏から。
欧州ルールは国際法と呼ばれるもの同義だ。
そのルールを定めるのは欧州評議会。
何百年経とうとも、ナーロッパが世界の中心であり続けているのだ。
いや、これから数百年後でも。
そうでなくてはならないと、欧州の国家元首たちは考えている。
「そうさなあ~ 渋チンの国王陛下。あなた、今、幾らで買い取りますか?!」
やっぱりそうなるよなあ。
ナーロッパらしいわ。