- C 918話 狂気と脅威 3 -
城州王は、先の精霊炉暴走によるモニター艦の爆発事故に追加調査を命じてた。
特殊弾頭の実験には成功している。
射出する時点で、従来の技術でも問題がないのに。
なぜ寄りにも由って今。
精霊炉を改良したのか。
これに疑問を抱いてしまったのだ。
ちょっと考えると。
苦しい言い訳のようにしか聞こえてこない。
いや破壊工作なのだから、苦しい言い訳なのだ。
調査をしたのも、ローデシア本人だから。
咄嗟に口から出た言葉を、報告書に書いただけ。
適当な言い回しがコレだ。
そうなると。
城州王は精霊炉の持つ無限の可能性よりも、だ。
単発で終わる破壊性に興味が向いた。
完全に暴走させなくても、船ひとつ分を大破せしめる威力がある。
「なんて素晴らしいエネルギーなんだ!!」
という発想に行きついた。
これを兵器化できないか、とも。
◇
つまり、
「海を蒸発せしめた爆弾と、不安定な精霊炉の組み合わせが用いられた。鑑定結果としては“狂気”だ」
この世界にも未だ、あるか分からなか“神”への冒涜。
旧時代のツケで美しかった世界が傷だらけになって、今、また...。
城州王と言う破壊者が、世界を傷つけようとしている。
「――っ、この世界には悪魔しかいないんですか?!」
地獄のようなって言われる。
神の存在より、悪魔の存在の方が多く見受けられるから、人々はこの次元を地獄と表現するんだが。
鶯はリリィの手を取り、嗅いで。
「糞を握った手じゃないな...こんな些細な幸運も、地獄であれば赦されないだろう。俺様からすれば、今まさに神の存在を知ったところだ。奇跡だと言って、キミらと分かち合える...じゃ、此処から、狂気への対処法について協議しよう!!」
泣き崩れてたリリィとユウキの顔に光が差す。
まあ、その小さな奇跡も。
ふたりの行動をよく観察していれば、答えなんてのは簡単に分かる。
それを如何に効果的に演出するか。
狂気にアテられたふたりには、希望を持ってもらわないと困る。
だって、魔女の血族には団結して貰わないと困るから。
とは、グィネヴィアさんの言葉。
『これから苦しい戦いが待っている』
◆
ウナ・クールの意識は、高高空にある“キング・マンタ”のスライムに移ってた。
用意できる適当なアバターがスライムしかないのは材料上の都合でしかない。
「緊急って何? こっちも事務処理で忙しいんだよ、25分の休憩は食事タイムと煙草喫煙の大事な時間なんだよね、分かるかなあ~ この社会人然とした」
うねうね動くスライム、もとい。
ウナちゃんに向けられた険しい艦長たちの顔。
視線は、壁に埋め込まれた巨大スクリーンにあって――「これより天界放送が流れる、各界の守護者たちよ心して受けるがよい!!」――声の主は、魔界を統べる少女皇のもの。
で、スクリーンに映った異形の者と、金切り声。
高次元の音? いや、ビープ音めいた何か。
「ちょっと、何があったんよ?!」