- C 917話 狂気と脅威 2 -
「うわあああああああああ!!!!」
ユウキ・シアンの悲鳴。
触らせないように遠のかせたのに、何故かにぎにぎしている始末。
「や、やだあああああああ!!!」
狂気と絶望 編。
あ、いやいや。
にぎにぎしてた手の中から糞を棄てる。
くんくん嗅いでみて。
「臭いね」
そんな子じゃ無かったよね。
ああ、役に成り過ぎだ。
「リリィが変になったああああ」
ユウキちゃんが可哀そうである。
◇
さて。
手を濯いできたリリィに百舌鳥が告げる。
「魔女の血族である君には、何が見えたのかな?」
ユウキは目を丸くしてるし。
当の本人も、能面のよう。
「はて」
「知らないフリはしなくていい。防音の結界内だ、アリスさまの目は誤魔化せても、スノーさまのアンテナに狂いはない。また、魔女の師であられた賢者さまも勘付かれて」
はて、ボクは何も知らないけど。
リリィとは会ったこと無いし。
いや、似た波長のだとローデシアって拉麺。
「うーん、そこまでですか...甲蛾衆ってステータスの鑑定とか、出来たりするんですか」
小さく頷くふたり。
百舌鳥と鶯だが、レベルの高い鑑定はスノーの得意とするものらしい。
ま、これで手の内はバレたか。
露見しても痛くない失費だし。
むしろ、対峙する相手によってはリスクが増しただけのこと。
まさに、リリィたち404のことだ。
「やっぱ、こええ連中ってことですね」
「そう、思ってくれながら、キミは何を見た?」
鑑定スキルがあるなら、もうこの街に何が起きたかくらいは分かっているのだろう。
魔女の血筋から来る悪寒の原因は。
「精霊の、いえ、力の暴走に見えました。なんかこう、上手く言えませんが...ぐにゃぐにゃと力が入り混じった渦のような世界が歪んで見える感じで。正気が保てられない気分なので、気を紛らせるために馬の糞を掴んでみたんです」
正直な子だ。
狂気に晒されて、拒絶反応を起こした。
仕込んだ“毒”が暴走しなくて良かった。
「ええっと、リリィが暴走したら?」
ユウキの震え声。
「ま、耐性がなければ即死でしょうか」
淡々という。
甲蛾衆はこの地に訪れる前に、万能解毒薬をモルゴースさんから渡されてた。
『きっと、身の安全に役立つから』
アヴァロンの魔女という立場上の助言だが。
万能薬の話は伏せている。
「ユウキさんは蘇生してあげますから、安心して寝てていいんです」
おおーい。
「でも、なんで街中で暴走が?」
そうだねえってか細く鳴くユウキ。
相槌も弱弱しくなってる。
泣きついて、ボクを殺さないでねとか。
故意ではないのだから。
「ま、これは実験も兼ねてるのでしょう」
「何の? いや、誰が?」
「城州王でしょう」
鶯の台詞にリリィが膝から崩れた。
なんか茫然と、百舌鳥らを仰ぐ二人があって。