- C 914話 三公の独立 4 -
怪鳥ゴーレムに、精鋭の中隊を搭乗させる。
これを大隊や、連隊規模で海峡を渡るというのだ。
「うへっ、そんなん地上から砲撃されたら」
グィネヴィアさんの手元に戻ってきたボク。
お腹をスーハーされたのち。
「心配ご無用!! 対物理防壁を展開するよう、組み込んでおくから」
ん? なまら???
◇
つまり、航空兵力でかつての条件付きというのは、もう障害でもなんでもない。
今のところ怪鳥ゴーレムにしろ飛竜ゴーレム、カイザー・ヴィルトを模したゴーレムの製造法はゴーレムマイスター以外、無理であるという。
所謂、オリジナルを越えられない劣化品ならば、模倣は出来る。
ボクとしては、それでも十分ではないかと思うんだけど。
「それ、本気で言ってる?」
おや、何か踏んではいけない尾を踏みまして?
「――マルは時々抜けてる事を言う」
ハナ姉の下に回ってきたボク。
背中ではなく、お尻を嗅がれた気がする。
「汗ばんできて、香ばしくなってる気がする」
「な、なんと?!」
食いつくメルちゃんと、何故かゴロゴロしてた寧華さんも飛び起きた。
モルゴースさんが紅茶を新しく淹れ直して――。
「発掘兵器の筆頭は、怪鳥ゴーレムだが。これの操縦には何ら制約がない。おそらく馴染みのないゲームパッドのような...2本の左右非対称のアナログスティックと、X、Y、A、Bの丸っこいボタンなどが配されて。使い方さえ分れば、誰でもが意のままにゴーレムの操縦が出来る」
うん。
それがコンセプトだ。
昔から、魔法使いじゃなきゃダメなんて条件、有難迷惑だから付与していない。
それが?
「なるほど無自覚という訳か」
グィネヴィアさん、深く息を吐いて嗤ってた。
悪い感じの方じゃなくて。
呆れた感じ。
「まま、そういうとこあるんで、こいつ」
ハナ姉の手から離れたボクは、メルちゃんの掌中へ。
汗ばむ首筋を舐められた気が。
いや、見てたモルゴースさんから「抜け駆けしたな、この泥棒猫ちゃんが!!」って。
え、あ。
「――えっと、航空騎兵構想によって地政学は新しい段階へと置換される。一気に時代が奔るような感覚だけども、こうなると...三公の背は同時に各個撃破とかも出来てしまうわけだけども、こいつは私たちにはメリットがない!!」
精鋭の方は、キリングヤシガニのひと回り小さいのがアレば。
グィネヴィアさんの構想としては、常にボクの手から生まれるゴーレムが基準で起草されてて。
「マルの頑張りが戦略の要とは...何故です?! グィネヴィア氏」
わりとボク回しで仲良くなってた筈のハナ姉が久しぶりに、キレた。
グィネヴィアさんに掴みかかる前、同室にあった平服のガウェイン卿に止められたトコ。
あ、居たんだ。
くらいの鎧なしとのギャップ。
彼女もボク吸い仲間である。
「よせよせ、ハナ。教授に何するかなんて質すことはしないけどさ。余計な体力なんか使うだけ損ってもんだろ? てか、手酷く返り討ちに合うお前の面倒なんて、あたしは見たくないよ?」
ハナ姉が腕っぷしで負けると。
いや、襟首掴まれるのを待ってるような、雰囲気は確かにあった気がする。
「ハナ君のキレどこは、うんうん、従妹思いは大変結構だ。お年頃のマルちゃんを仔猫でも扱うように吸い回すので、マスコット以外の感情は無いものかと思ったけども」
挑発しないで。
◇
暫くすると、地上にある宮殿から。
茶菓子を申し付けられた、中身三十路の幼女が工房に降りてきた。
そこからは、ボクとウナちゃんの回し吸いの会が設けられ。
「三公にはそれぞれ、条件付けで独立して貰おうと思う」
果てしない構想の末か。
或いは...