- C 913話 三公の独立 3 -
内紛というカオスな現象は、他国からしたら。
とても香ばしい匂いがするのだという。
落ち葉にそっと隠した芋の焼け具合のように。
すんすん嗅いでみて。
ああ、灼けたなあって感じで。
「じゃ、じゃあさ。最初から会談先を甲蛾衆経営のホテルにしとく?」
ボクの他愛ない提案は速攻で却下された。
ボクからしたら提案ではなく、雑談?
「ホテルで会談は悪くはない。ただし、物々しい警備と面子でスパイ連中の目を引くことは間違いない」
秘密裏にと、それぞれの思惑で訪問している三公の使者に。
余計な気を遣わせるのは、いささか宜しくないという。
「秘密裏に?」
◇
西大陸での暗躍と言うのは、白服の撃退以降ではもっとも厳しくなった。
新体制に対して弓を引く三公の動向だって、隠し通せないだろう。
ビスマルク多島海・ヒルデスハイム伯爵領を経由して入国している“ホワイト・レイク辺境伯”と“アーガイル辺境伯”の使者は、折角の偽装工作も変装だって城州王には筒抜けだってことだし。堂々と親睦を深めるって南方海路に出たロッキンガム公も筒抜けだったりする。
ま。
後者の公は、公式使節団って宣伝しているから喧嘩する気満々だ。
一応、優秀な家臣たちからは自重って言葉出ている。
余計な波風を立てなさんなと。
「――警備によって衆目が集まる以外に、三公の使者が鉢合わせするのを減らさねばならない」
「なんで?」
素直に聞いちゃってた。
グィネヴィアさんがボクを抱き抱えると、ハナ姉の前で吸った。
ほわっ?!
「それぞれは必ずしも一枚岩ではない。今回は利害の一致で三公同時蜂起したとの事だけども、それぞれがどう生き残るかを手探りの状態なのだろう。そこで、例えば正面の敵に対して専念したいと考えた時、東大陸の新興国家は驚異の極みだろう」
たとえ、大陸の全土を掌握していなくても、だ。
「虎の威を借りれるのであれば、名義だけでも強力な武器になるだろう」
実が伴うのであればもっと確実さが増す。
いや、後ろに憂いがなければ全力でコトに当たれるという訳だ。
ノーザンテリトリー州の中央には、南北に走る峡谷であり海峡がある。
幅は約20キロメートル余り。
毎年、数メートルずつ離れて行ってる地域で。
海底火山が沢山あるという。
そのため、地熱による発電が試みられてけど...
精霊炉よりも不安定だったようだ。
「確かに立地的に直接、辺境公を襲うのは容易ではない。(お日様の匂いがすると、ボクの回し吸いが始まる)ま、これまでの戦い方であればって条件が付いてくる。マルちゃんが...いや、オリハルコン粘土なる玩具が実は、腐るほどあるって言ったらどうだろう?!」
ボクの耳が大きく動いた。
オリハルコン粘土の天然ものはしばらく目にしていないけど。
「いあ、質は数段落ちはするけども、量産できなくはない」
セメントのように、オリハルコンの粉末と粘土を馴染ませられれば、数リットルの聖水だけで作れるのだという。なんだ、そのクッキング風味は??!!
「それで...」
「ゴーレムを作ってよ?」