- C 912話 三公の独立 2 -
アマゾネス要らずだが。
アリスさんは妹のスノーによって回収された。
で、スノーさんが客間を出る際に、
「姉上さまは、ローデシアさまのお嫁さんになるんだと、勝手なことを申し上げておりましたので。こちらで速やかに再教育いたしますので、心身ともにご安心ください」
ローデシアは、ホテルにチェックインした時の偽名だ。
ぴんく☆ぱんさーというクランの総長としては、思い付きでも響きのキレイなのが選べたと自負。
御付きのアマゾネスたちも、気に入ってる様子。
「しかし、どちらが聖櫃の?」
気が付けなかった。
今も悪寒と、視覚的迷いの森結界でフィルターが掛かってる。
「わかんない」
首を千切れんばかりに振ってた。
「わかんないけど、あの場に魔女が居た。しかも凄腕の魔法使い殺しの魔女が」
ボクのコトか。
ふふん、照れるなあ。
「魔女ですか」
「厄介だとは思うけど。直接対峙したり、こちらが敵対行動をしなければ...見逃してくれると思いたいが。分霊と呪術除けの身代わりを用意しておいてくれ。どこで虎の尾を踏むか分からんから、な」
◇
ほどなくして、予見通りに西大陸の三公から使者が来る。
ホワイト・レイク辺境伯の軍使は、公の末姫――
継承者よりも武人のような立ち位置に信を置いている形で。
上の三人の兄たちよりも剣に秀でていた。
嫁ぐって選択肢もあるんだけど。
「嫁ぐ? 私が? そんな選択肢は必要ありません。私は私の好きなように、そうですねえ...軍の中から気が合いそうなのを2,3人見繕っておきますのでご安心ください」と、父や兄たちを困らせた。
そんなお転婆である。
軍使だって、本人が勝手に来ちゃった雰囲気もあった。
で、次に。
同じ頃、同じように国境を越えたのはアーガイル辺境伯の通信使だ。
旅商人のような風体でトレス海峡諸島に押し込められた。
クイーンズランド王国の入国審査は民間人にも厳しく接しているので、抜け道は無いと敵対者にそう思わせている。
これはまあ、予防的処置。
それこそ何でもアリと思われるの癪という、寧華さんの感情があって。
西大陸から来る人々には特に厳しく当たってた。
で、そのアーガイル辺境伯の通信使なんだけど。
次男坊が軍服を着るかで悩んでる。
御付きの傭兵風のふたりは、公の場になるから着るべきだというんだけど。
なんか煮え切らない様子。
どうしたいんだよ、あんたはさ。
さて、アリスさんたちと同じ航路で海を渡った、ロッキンガム辺境伯の使いは公式の使節団。
友誼が得られたらを期待して送り出された外交員といったところか。
最上は何かしらの友好的な繋がりを得る事。
最悪でも接点になれば良しといったところか。
外交使節団なので、人数は一番多く目立ち過ぎだった。
とはいえ。
あからさまな意趣返しだろう。
城州王とは密約で繋がり、互いに打算の上での関係だった。
片や城州王は、いい様に利用した後に改易する腹を隠し通してて、片やロッキンガム侯も。
互いの利益追求のために活動してた訳だが。
破綻したので、敵同士になった。
「出来得る事ならば軍事同盟が結べれば」
団長の寝言だとされた。
本人は至って本気だったんだけど。
使節団はリアリスト、皆が皆で「この会談で決まるとすれば、背後を撃たない」ってトコだろうと。