- C 911話 三公の独立 1 -
「西大陸の内戦をもう少し活気づかせたい」
何ですと?
◇
「漠然としたいい方で申し訳ない。具体的には、三公からしばらくすれば...(ひと呼吸の間が取られた後)申し出が来るだろうな。その提案にすぐに飛びつかないで欲しい」
提案?
「提案なのか、ソレは?」
食いつくグィネヴィアさん。
おやおや、何か見えてます? お二方。
「何かアルと悟られましたか」
これは探り合いだろう。
先に撤退したのはグィネヴィアさん。
たぶん、
「いあ、いい。話を続けてくれ」
「ま、悪い話ではありませんが、件より...貴国内で暗躍しているスパイ連中は、城州王の坊主が手の者。まあ、把握しておられるでしょうけども。その泳がせている連中の中に少し厄介なのが居りまして」
歯切れ悪いなあ。
こういうのは“教えてもいいけど”なんてのがあって、恩を売るってより捻じ込んでくる感じ。
で、だ、後日。
アレの借りを返して貰おう! 身体でなって感じの要求が来る。
っほんと、厄介な貸し借りだと思う。
「そうか、その厄介者を敢えて見逃した結果、こちらが手痛いしっぺ返しでも貰うわけだな」
ハナ姉は黙々と聞いてる方。
グィネヴィアさんが、質問してるんだけど。
「流石は、陣営の軍使さまだ!! 戦場でも武人の如き大活躍との事ですが」
総長さんが見ているのは、グィネヴィアさんの方で。
ハナ姉じゃない。
ずっと押し黙ってたり、時々、ガウェイン卿に話しかけてたりしてるだけで。
ああ、役割を変えたんだ。
本当にぴんく☆ぱんさーには千里眼があるのか、と。
◇
ボクの出番は殆ど無かった。
カウンターマジックまで仕込んでたのに。
帰城後まで、も。
で、ボクらが帰った後、メンマステッキを放り投げた総長さんは、床に転がってすすり泣いてた。
どうした、あんた?
「めちゃくちゃ怖いじゃんか、どんな化け物と付き合ってんだよ」
アリスに当たる女性。
履いてたヒールまでも肉巻きウインナーに放ってた。
「当たると痛いから、辞め!! 止めろって!」
ごろんごろん転がって逃げる。
部屋の端で止まって...
顔は何処だろう?
「なあ」
「口を利くな、糞、キノコ派め!!」
タケノコ派ともども何があったんだよ、キノコに。
「三公ってのは」
「地方領主の筆頭格の三者だ。東大陸がかつて義帝・女王の傍流血統で蜂起して以来、あの国境には三公っていう辺境伯制が敷かれてある。火山地帯でもあり、侵攻も容易では無いんだけども(ちぢれ麺が如きウイッグを剥ぎ取って)西大陸の連中、特に王族たちは簒奪した罪は何代も重ねてきたんだろうねえ、さっさと忘れちまえばいいのに」
総長は大の字に手足を伸ばす。
ああ、えっと股をそっちに向けると――アリスさんがニマニマ微笑んでる。
うわぁ直視と言うか、怖いなあ、ソレ。
「城州王が真の王として立つには、辺境伯制は無意味だ。そもそも、アレと三公との間に前王朝繋がりの忠誠心は無い。王国の中に別の国を三つも抱えているようなもんだしな」
なんか、鼻息しか聞こえてこない。
いあ、耳を澄ませると...
もっと開けとか、か、嗅がせろ、嗅ぎたい、戴きますとか。
肉巻きウインナーが空を飛んだ。
いあ、天井めがけて。
「死ねやー!!!」