- C 910話 ぴんく☆ぱんさー 5 -
スカイトバーク王国の野望は、アジアの新しい領主として迎え入れられることだ。
大航海時代から後れをとって3世紀半。
冒険者を送り出して生計を立ててた国家だけど。
急激な変化に取り残されてしまった。
巨大な帝国の解体と、再生を見て。
国外に埋蔵させた資産によって見事に返り咲いている現実。
まあ、これは単に搾り取っただけに過ぎないんだけど。
スカイトバークには不死鳥のような再生に見えただろうし。
国家の蘇生とも言えるだろう。
「鬼掛りですね」
とは、王室関係者の言葉のようで。
カスピ海が隕石の衝突によって、ペルシャ湾とオマーン湾、インド洋と繋がった立地となったけど。
大海に漕ぎだす遠大な思想は持たなかった。
スカイトバークにとっての世界とは、自国を中心とした中央アジアであって。
ナーロッパではないし、極東でもない。
それぞれの端っこから来る文化や、影響を少しづつ受ける程度で。
栄えていくことが出来た。
◇
ホテルの一室に、王宮からの使者としてハナ姉とグィネヴィアさんが現れた。
従者として従える騎士にガウェイン卿が配置されて、巨人族の中にボクが混じる。
魔術的サポーチメンバーだって話で。
「甲蛾衆のスノー・カフェインです」
扉の前で、アリスさんの代わりに応対してきた少女。
明らかにガウェインさんが警戒してるけど――会談に参加するハナ姉の肝の太さは、しめ縄よりも太いのは承知の上だけども、グィネヴィアさんの方はもっと動じてない。
まあ、ボクらと甲蛾衆なんて身内のようなもんで。
緊張はしないけど。
聖櫃の方はどっちかと言うと...
「どうも、どちらが聖櫃の関係者で?」
案内された部屋の奥に、ぴんく☆ぱんさーの総長があった。
いつもの変装。
ちぢれ麺を彷彿とさせる長髪ウイッグに、メンマ風のステッキ。
これが最初に視界内に飛び込んできた情報だったが。
「(片目を手で覆いながら)なるほど、魔女というのは本当らしいな」
ハナ姉の目が細くなる。
獰猛な獣のように喉を鳴らしてるような。
や、やめ...
「先ずは話を聞こう、それから噛みつけばいい、だろ?」
グィネヴィアさんの制止。
ボクは、ガウェイン卿の影に隠れてた。
同じ属性の魔法使いなら、視認されないように動いた方が得だろう。
例えば結界とか。
カウンターマジックとか。
会談の内容は、甲蛾衆と事前に打ち合わせていたものと同じものだった。
まあ、どちらかと言うと“提案”にちかい。
聖櫃と袂を分けてただ今、独走中の城州王を止める事。
近いうちに、ただただ壊して回る厄介な為政者になると、予見したとか言ってた。
「どういう事?」
ハナ姉がボクに意見を求めてきた。
「多分、未来視の魔眼か、なにかかな?」
確定しない未来のひとつを覗き込む能力。
そこへ至る道のりも見えるので、回避可能ではあるけど。
至る道の方が漠然としちゃってる時が多い。
「どうしたのかな?」
ハナ姉が従者の騎士と相談しているように見えている。
それが総長さんには、不思議そうに見えるようで。
勘のいい人は厄介だなあ。
「で、どうしろと?」
グィネヴィアさんの問い。
再び、タゲを取り直す行動は流石です。