- C 905話 霧の向こう 5 -
ボクは、島の北東にある砂漠に移動してた。
このエリアは、激戦の跡地という設定で。
停車駅の要塞機能は壊滅的とされ、停車する列車は皆、兵員輸送車だけだった。
さて、内陸にある都市部には“ウイグスリー”と命名された、当時...うーんとパンフでは四半世紀前。
ざっくりしてんなあ。ここの設定。
かつては活気がある名だたる開拓都市だったという。
現状、人の気配があれば友軍か或いは、敵軍かのソレしかない状態である。
で、ボク。
受注したクエストの成果報酬の受け取り場所が、だ。
この“ウイグスリー”になってたけど。
この連続するシナリオ形式のクエストはいい加減、どこかで可否のスイッチが欲しいところ。
言うて。
連続発生して一連のバンドルオーダーだからこそ、莫大な報酬とルートボックスがランダムで貰える。
もっとも、金から銅色の箱がそもそもガチャで。
ボックスの中身もガチャとなると、一部のマニアかマゾ体質でしか回されないわけで。
ああ、ボクも新しいオーダー獲得のために毎日一回は、コレをする。
糞めんどい。
「本音が駄々洩れ、十蔵ぉ~ちゃん、いい加減諦めてね~ええ」
イケメン狗頭がこちらを拝んでる。
崇拝してるんじゃなく、ボクが彼に付き合わされてるわけ。
「姉の目を盗んで、ここに居るって言ったよね? こんな毎日インしたら連続バンドルオーダーに付き合わされる...」
狗頭がボクのアイテムポシェットに、ガチャ券を捻じ込む。
駅前で配るティッシュに付いてる優待券じゃない方。
そんなゴミ捻じ込んだら殺すわ。
「これは前金。ほら、欲しがってたガチャ券、えっと4枚でいいんだよね?」
不足分だ。
確かに4枚でいいとは言ったが、今のところ2枚頭が出てる。
ま、くれるというので貰っておこう。
「...っ、ソロアタックした友人がさ」
うん。
クエスト受注には隠し要素がある。
もっとも、円滑に回す側には意図がある――PT必須条件。
世にある遊戯の目的は、大勢でコンテンツを楽しく消費して欲しい、と。
そんなに沢山、友達がいればな...
そもそも論で言って。
友達とわいわい騒ぐわ。
まあ、ボクの寂しい私生活はどうでもいいな。
どんなオーダーも複数人で挑んで欲しいというルートを促している。
じゃないと、コンテンツの消費。
いわゆる寿命が短くなるからだ。
故に!
沢山回されて、消費されてもマゾ仕様にすることで防ぐ。
ああ、そんな事をしたからソロが増えたんだけども。
PT必須には必ず定員枠がある。
最低でも4人以上。
ここで定員割れを起こしたら、難易度があるとすればよかった。
ソロプレイは無理ゲーってね。
アホだった。
「定員割れで、逆にエネミー側が良心的でサクサク倒せるゆるげーになったって話、したよね?」
ああ、された何度も。
連続発生ノンストップ・バンドルオーダーでなければ、時間がおしたら離脱したいとこだけど。
これトイレタイムもないし。
マジ、怠い。
「また、本音が吹きだしになって出てる」
寂れた開拓局前でのコントだけど。
毎回、おなじメンツを見るなあ。
「おたくらも、性癖が同じで?」
違ぇーよ、話かけんな!
「いや、十蔵はノーマルだと思います」
「は?!」
「え... ヤベ」
お前?!
「や、ち、違うよ。違う、違う、違う...ここから出るルートボックスが目的で」
繕う怪しさ。
こいつ真性だったか。
「や、あー...クエスト始まるよ」
糞、また周回かよ。