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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
2039/2356

- C 902話 霧の向こう 2 -

 単線の線路を、装甲列車が奔る。

 18両編成、前段、中段、後段にそれぞれ独立した機関車を連結させて。

 重たい積み荷と自重を前進、加速させて走らせていた。

 機関車の後に装甲貨車があり、貨物車両が13両。

 装甲貨車の積み荷は重武装の傭兵たちだった。


 それ以外の貨車の中身は最前線への補給物資だが。

 定期的に湧くクエストにこういうのがある――装甲列車を死守せよ――。


 島大陸にあるいくつかのフィールドに届ける物資。

 給料とか食料とか、或いは医薬品に衣料なんかもあって。

 民間人への大事な物資なんかも載せてある。


 死守できなかった時のペナは考えたくもないけど。

 各地の街に住む民間人が暫く()()()()環境に置かれるわけで。

 ちょっと良心が痛むよなあって感じか。



 こういうクエストが定期的に湧く理由。

 そりゃ決まっている。

 原住民との長きに渡る抗争から、補給線が一番狙われるからだ。

 上陸したてから半世紀までは、輸送する手段が馬車しか無かった――外甲殻っていうパワードスーツみたいな未来感があるに。人類サイドの輸送手段が、時代を逆行している理由は“誓約”ってのがある。

 島大陸にだけ()()世界の理。

 この大陸の空は見せかけである、だ。

 低く飛ぶことは出来る。

 まあ、せいぜい...箒に跨って飛ぶくらいなら。

 酸素マスクが必要ではない高さ程度。


 標高が数千メートルありそうな山から飛び立つと、“理”に倣って()()()()、いわゆる重力か引力めいたもので押し付けられるようだ。

 人類種に限った話では無いから、人々はこれを()()と呼称している。


 つまるとこ、これが有るから人類側は負けはしないけど勝てもしない。

 島に渡る者たちにも篩が掛けられてた。

 一方的に渡航してくる勢力が増えすぎないような、配慮の仕方。


 領海に入る寸前に選別されるんだ。

 で、篩に掛けられた者は境界を渡って海に浮かぶ。

 乗ってた船は何処にも無いから...

 ソレを牛蒡抜きでもするように()()する船が境界前に待っている訳。

 選別される条件が、今のところでは外甲殻を持っている場合なら100%渡航可で。

 生身だとランダムって感じだ。


 そんで...。

プラ蔵、慣れてきたかい?」

 話しかけてきた奇抜な彩の強化甲殻イヌっぽい、兄ちゃん。

 大手錬金術メーカーが昨年、販売してたショートプレミアムパスのピックアップシリーズ。

 アヌビスって名前だった強化甲殻で。

 全部揃えた猛者は、確か数名だった気がした。

「それ?」


「ああ、お気に入りだよ」

 オークションとかバザーでも見かけるけど、今出回っているのは恐らく、いや。

 間違いなく贋作だと思う。

 知ってて大金を払う者も少なくはない。

 何せ持ってる人だけが甲殻の持つユニークスキルを知ってるんだから。

 出回ってる贋作を偽物だと断言できる人は限られる。


 いや。

 見通しが甘いな。

 それらを否定するというだけで、PvPへ誘われる。

 攻撃を仕掛けても、権利が譲渡されることは無い。

 本人からドロップしてもだ。

 まあ、腹いせにあり金と衣類は持ってかれるんだけど。

 そもそも甲殻を着てれば、服が要らないって連中も多く...。

「な、なんだよ、プラ蔵。何、マジマジと見てるんだ」

 いあ、この兄ちゃんも中身が素っ裸だったなあ、と。

「イケメン!」


「おおよ、あんがとな」

 甲殻の狗面がイケメン。

 中身の話はしてないよ。

 ま、そんな雑談はいいか。

「輸送隊長からの通達だ。例の如く原住民ヤツらが山岳地域の稜線に()()()。数は斥候の方でもつかみ切れてねえ。だから、よ」

 肩を激しく揺らされた。

「十蔵たちのようなメディックには活躍の場が広がるってもんだ!! 頼りにしてるぜ、お前の腕をよ」

 ボクはプラ蔵。

 烏形の強化甲殻で身を包み、長い嘴と三つの目を持つ。

 異形種だけど。


 選択した職業で今や、戦場を舞う天使だ。

 ま、自分で言うのもこっ恥ずかしいが。

 頼りにされるのは悪くない。

「ボクらの給料も」


「ああ載ってるから、歩合分を稼ごうな!!」

 叩かれた背中はじんじんするけど。

 気合が入った気がした。

 よーし、がんばるぞい。

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